再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第33回 てんかんの既往をもつ知的障害者の生活をどう支えるか
(2001年10月号(2001年9月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Dさん(在宅介護支援センター・ソーシャルワーカー)
事例の概要
クライアントのSさん(72歳・女性)と同居していた弟Nさんが入院したため、Sさんはひとり暮らしになった。Sさんには知的障害とてんかんの既往があり、近隣に住む弟Bさんとその妻Rさんが、Nさんの入院中かかわることになった。
近隣に住む弟Bさんは、字が読めず車の運転ができない。いきおい妻のRさんが、Sさんの見守りやNさんの入院手続きなどを行っていた。しかし、Rさんには狭心症の持病があり、介護負担のためか体調がおもわしくない。キーパーソンを代えたほうがいいのか、今以上にできるだけ負担をかけないように援助を続けたほうがいいのか悩んでいる。
プロフィール
- ・72歳のSさん(女性)は、弟Nさん(63歳)と一戸建てに二人で住んでいた。
- ・SさんとNさんには、ともに知的障害がある。Nさんは読み書きはできるが、Sさんはひらがながかろうじて読める程度である。
- ・Sさんは、幼い頃から家の周りの山や田畑に家族と一緒に草刈り等の仕事をしに行くぐらいで、ほとんど街に出ることはなかったため、社会交流はなかった。
- ・Nさんがバイクに乗って買い物に行き、調理もしていた。SさんはNさんの声かけで、山や田畑の仕事をしたり家事の手伝いをしていた。
- ・今年の7月に、Nさんが脳梗塞のため倒れて入院することになり、Sさんのひとり暮らしが始まった。介護保険等の手続きを行い、「要支援」の結果が出ている。
- ・近隣に住む弟Bさん(61歳)は、文字の読み書きができないため、援助の中心は妻のRさん(59歳)が担っている。
現在のサービス利用状況
- ・週1回のホームヘルプサービス(家事援助)。
- ・民間のお弁当サービス(おかずのみ)。毎日家に持って来てもらっている。
- ・2週間に1回の往診。
- ・週1回、作業所に弟嫁のRさんの送迎で通っていたが、4月12日からRさんの体調が悪くなり、送迎ができないとのことで参加していない。
- ・BさんとRさん夫婦の毎日の見守り。
- ・Sさんは療育手帳(B)をもっている。
経済状況
- ・SさんとNさんの障害年金(約20万円/月)。
- ここから先は、誌面のPDFファイルにてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。