再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第23回 経済困窮状態にある末期癌の在宅高齢者を援助する
(2000年12月号(2000年11月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Fさん(在宅介護支援センター・看護婦)
クライアント
O氏 大正6年生まれ。82歳。
現病歴
平成11年3月 多臓器悪性腫瘍(発病は膀胱癌から)
平成11年10月 貧血、狭心症
家族構成
長男(隣市在住)、次男(隣市在住)、三男(同居)
事例の概要
- ・大正6年 7人兄弟の次男として生まれる
- ・昭和15年 師範学校を卒業、教職につく
- ・昭和18年 結婚
- ・昭和43年 校長職を経て退職
- ・昭和50年 三男は大学在学中、ノイローゼになり中退。その後帰省。K保養院に入院。
- ・平成9年 三男、保養院を退院
- ・平成10年 長男の会社の保証人倒れで債務責任を課される(総額3000万円)。以降、自宅に再々、金融会社から取り立ての電話がくる。
- ・平成11年1月 妻病死。長男は葬儀への参列を希望していたが、本人は、妻を病死に追いやった原因は長男が妻に経済的に心配をかけたことにあると憤っており、これを拒否。結局、長男は葬儀に参列できなかった。以来、長男との行き来はなくなる。
次男は月に1~2回、仕事の帰りに本人宅に立ち寄り、本人と弟の様子を見に来る。 - ・平成11年3月 妻が先立った精神的ショックと毎日のようにかかってくる借金取り立ての電話によるストレスから体調不良となり、S市の病院に入院。その間、三男は独居となる。
- ・平成11年4月 退院
- ・平成11年7月 腹痛のためL病院に入院。8月末に入院費の未払いと本人の希望により退院。精神分裂病の三男とのふたり暮らし生活に戻る。
- ここから先は、誌面のPDFファイルにてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。