再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第20回 25年間、社会から孤立してきたクライエントに共感するためには
(第4号(2000年4月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Tさん(在宅介護支援センター・ソーシャルワーカー)
事例の概要
氏名 S氏(74歳)男性
家族 妻(71歳)
生活歴
大正14年生まれ。県内S村に生まれ、尋常小学校卒業。高等科2年修学後、家業の手伝い(農業)に就く。現在の妻と結婚し、三男をもうける。7年前までは長男と同居していたが、長男の結婚により夫婦二人暮らしとなる。子どもは3人とも車で40分くらいのO市に在住。
Sさんが49歳で倒れてからは、妻が生計を支えてきた。次男と三男は高校を中退して職に就いている。
既往歴・健康状態
49歳の時、出稼ぎ先のA市で倒れる。高血圧などの既往歴はなかった。同市内のA病院に入院。脳内出血と診断され、左麻痺が残る。2カ月入院し、座位はとれるようになった。その後、B市のN病院に転院し、リハビリを行う。平行棒につかまって、何とか歩くことができる状態だった。1カ月ほどで退院。
身障手帳1種1級取得。自宅では鴨居などにつかまり歩行していたが、平成10年8月に自宅廊下で転倒し、現在は寝たきりである。25年前に倒れてから、外部と接することなく生活してきた。
退院当初、ホームヘルプサービスを利用したことがあるが、現在は一切サービスを利用していない。
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プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。