介護現場のコミュニケーションで使える言い換え3選
介護現場のコミュニケーションで使える言い換え3選
「ほかにもお待ちの方がいるので」「一人で歩かないでください」こんなNG声かけしていませんか?
ふだん皆さんは、誰かからかけられた言葉によって、やる気をなくしたり、反発心を抱いたりしたことはありませんか? もちろんそれは、介護を受けている高齢者も同じです。
しかし、介護現場は多忙なので、どうしても言葉遣いにまで十分に気を配ることができない、という方もいるでしょう。ただそれは、言葉選びのエッセンスを知らないだけかもしれません。言葉選びの型=言い換えを学び、そのエッセンスさえ理解すれば、自然に相手に喜ばれたり、相手をやる気にさせるような言葉選びが身につくはずです。
ここでは、そんな言い換えの例を『利用者・家族・スタッフに信頼される 介護のステキ言い換え術』から、いくつかご紹介します。
【この記事を監修した人】
大野 萌子
日本メンタルアップ支援機構 代表理事
待ってもらうときは「お詫び」と「目安」を伝える
利用者から要望があり、「今すぐして」「早くして」と言われても、ほかに優先して対応すべき人・ことがある場合、その人だけを優先することはできません。
「具合が悪い」など、急を要する場合以外は、平等性を保つ必要があります。
そこで、「ほかにもお待ちいただいている方がいるので」などと、正当な理由を述べて、それを利用者に理解してもらおうとしがちですが、これは逆効果です。
「みんな大変なんだから、あなたも我慢してください」という同調圧力的な説得と受け取られ、かえってないがしろにされたと思われてしまいます。
まずは、要望に応えられないことに対しての「お詫び」を伝えましょう。
そのうえで 「目安」 を伝えることができると、さらによいですね。
どんな物事も「ゴール」が見えていると、人は落ち着くものです。
「5分お待ちいただけますか」「これが終わったら、すぐに対応しますね」など、ある程度、具体的な目安を伝えると理解してもらいやすくなります。
ただし、目安がわからない場合は、無理に伝える必要はありません。期待をもたせたにもかかわらず、大幅に遅れてしまう、あるいはできないとなれば、不信感を抱かせてしまうからです。
ルーティンでも意思の確認を
食事や入浴など、ルーティンを知らせる声かけは、日々何度も繰り返されるからこそ、大切なかかわりです。
人は誰しも、入浴や食事など、生活をするうえで必要な行為に対し、面倒だと思うときがあります。
特に高齢者は、身体の調子や気分によって、そうした行為に対し、後ろ向きになることも多くあるでしょう。
認知症により、行為の必要性が理解しづらい場合などはなおさらです。
そんな利用者に対し、指示したり、強制するような言い方で誘うと、かたくなに拒否されてしまうことがあります。
説得するのも一苦労で、介護職は余計なエネルギーを使い、時間もかかってしまいます。
こうした事態を防ぐためには、利用者に主体的に動いてもらうことが大切です。
すると、本人だけでなく、介護職のストレスも軽減されます。
そのための鍵は、相手の意思を確認する声かけです。
さらに、よいイメージを抱く言葉をプラスするとより効果的です。
たとえば、「今日は暑かったので、汗を流すとさっぱりしますよ」「寒いので、身体を温めましょう」など、ポジティブなイメージを伝えると、「前向きに取り組もう」「楽しみだ」という気持ちにつながりやすくなります。
お願いは提案のかたちでする
利用者が安全上のリスクがある行動をしたとき、心配する気持ちから、つい「○○しないで」「○○はダメ」と、行動を否定・禁止する言葉を使っていないでしょうか。
強い口調で否定的な言葉を使って指示するほうが、相手に伝わると考える人もいるかもしれませんが、それは間違いです。
こうした言葉は、「スピーチロック(言葉の拘束)」と呼ばれ、介護の現場では避けるべきものの一つとされています。
否定的な言葉では、誰もが不快な思いをするだけで、言葉を素直に受け取ろうとは思いません。
場合によっては、萎縮したり、反発したりすることもあるでしょう。
利用者のなかには、認知症の影響により、なぜ自分が否定的な言葉を投げかけられているのかの理解が難しい人もいます。
こうした経験が積み重なると、利用者は、スタッフに対して嫌悪感を抱き、話をまったく聞いてくれなくなることさえあります。
大切なのは、利用者の意思を尊重し、「○○しましょう」「○○しませんか」という提案のかたちでお願いをすることです。
利用者は、自分のことを心配しながらも、意思を尊重してくれるスタッフに信頼を寄せ、言葉を受け止めようという気持ちになります。
何よりも、利用者のできることを尊重する「自立支援」につながります。