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今さら聞けない 保育士等キャリアアップ研修の基本のき

今さら聞けない
保育士等キャリアアップ研修の基本のき

 保育士等キャリアアップ研修は、保育士の専門性とキャリアアップを支援するために設けられた研修制度です。厚生労働省が策定したガイドラインに基づき、都道府県などが研修を実施します。この研修を受けることで、保育士は専門性を高め、リーダーシップを発揮できるようになり、保育の質向上に貢献することが期待されています。
 私立の園には月々5000円、4万円の処遇改善等加算があることからも、制度の導入以後、園の関心も高いかと思います。これまでは経過措置として研修の受講が加算の要件とはなっていませんでしたが、段階的に義務化され、令和8年度からは完全に受講が必須となります。
 「キャリアアップ研修は受講したけれど、どのように給与に反映されるのかわからない」という方も多いかもしれません。
 そこで今回は、今さら聞けないキャリアアップ研修制度の概要をお伝えします。

目次

1 研修の目的

 保育士等キャリアアップ研修は、保育の質の向上と保育士の専門性向上・キャリアアップを目的としています。
 保育士は、子どもの保育や保護者への指導を行う専門職であり、常に知識・技能の修得、維持、向上に努める必要があります。 保育園には、保育の課題や職員のキャリアパスを考慮した体系的な研修計画の作成が求められています。
 同研修は、保育現場におけるリーダー的職員の育成を目指し、研修内容や実施方法等を定めたガイドラインに基づいて実施されます。 この研修は、保育士が専門性を高めながらキャリアアップできる仕組みを構築し、保育の質の向上を図ることを目的としています。 研修の修了は、キャリアアップや処遇改善につながる可能性があり、保育士の定着促進にも寄与することが期待されます。

2 研修分野と内容

 研修は、保育現場で必要とされる専門知識やスキルを習得できるよう、8つの分野で構成されています。 各分野の研修時間は15時間以上です。

  • 1.乳児保育(主に0歳から3歳未満児向けの保育内容): 乳児の発達段階に合わせた保育内容、適切な環境構成、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 2.幼児教育(主に3歳以上児向けの保育内容): 幼児の発達段階に合わせた保育内容、適切な環境構成、小学校との接続、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 3.障害児保育: 障害児理解、適切な保育計画の作成、発達段階に合わせた保育、家庭や関係機関との連携、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 4.食育・アレルギー対応: 食育計画の作成と活用、アレルギー疾患への理解と対応、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 5.保健衛生・安全対策: 保健計画の作成と活用、事故防止と健康安全管理、感染症対策、保育中の事故発生時の対応、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 6.保護者支援・子育て支援: 保護者への相談援助、地域における子育て支援、虐待予防、関係機関や地域資源との連携、他の保育士への助言・指導に必要な実践的能力を習得します。
  • 7.マネジメント: ミドルリーダーとしての役割と知識を理解し、円滑な組織運営や保育の質向上に必要な、マネジメント・リーダーシップ能力を習得します。
  • 8.保育実践: 保育における環境構成、子どもとの関わり方、様々な遊びを通じた保育、指導計画の作成と評価など、保育実践に必要な能力を習得します。

3 研修の対象者

  • 専門分野別研修(①~⑥): 保育現場において、各専門分野に関してリーダー的な役割を担う者(役割を担うことが見込まれる者を含む)
  • マネジメント研修: 各分野におけるリーダー的な役割を担う経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う者(役割を担うことが見込まれる者を含む)
  • 保育実践研修: 保育現場における実務経験が少ない者(保育士試験合格者等)、長期間保育現場から離れていた者(潜在保育士等)

4 研修修了後の効果

  • 修了証の交付: 研修修了者には、都道府県と研修実施機関から修了証が交付されます。
  • 全国での有効性: 修了証は全国で有効です。
  • キャリアアップ: 研修修了は、キャリアアップにつながる可能性があります。例えば、副主任保育士や専門リーダーへの昇格要件に、キャリアアップ研修の修了が含まれています。
  • 処遇改善: 研修修了者には、月額4万円(4分野受講<マネジメント分野は必須>)・同5000円(1分野受講)の処遇改善等加算が交付されます。

5 研修の実施体制

  • 実施主体: 都道府県または都道府県知事の指定した研修実施機関
  • 研修実施機関: 市区町村、指定保育士養成施設、または就学前の子どもに対する保育に関する研修の実績を有する団体
  • 委託: 都道府県は、研修実施機関を適当と認める団体に委託することができます。
  • 講師: 指定保育士養成施設の教員、または研修内容に関して十分な知識と経験を有すると都道府県知事が認める者

 このように保育士等キャリアアップ研修は、保育士が専門性を高め、キャリアアップを実現するための重要な制度です。現状は保育士の法定研修が制度上存在しませんが、本研修は園の中核リーダーとなるための実質的な研修制度といえます。最新の保育の動向を知るためにも、受講を考えてみませんか?

6 保育士等キャリアアップ研修にはこのシリーズ!

シリーズ監修:秋田喜代美・馬場耕一郎