保育所児童保育要録の書き方・ポイントを徹底解説 !項目別の記入例も紹介
「保育要録」に悩む年長児クラスの担任必見!
何をどのように書けばよいかがわかります
日々のさまざまな書類作成も、保育者の重要なお仕事。
なかでも、年長児クラスの担任になった方は、「保育所児童保育要録」の作成に悩むことが多いのではないでしょうか。
本記事では、そもそも保育所児童保育要録とは何なのか、どのようなことを書けばよいのか、書き方のポイントと記入例などを徹底解説します!
保育所児童保育要録とは
保育所児童保育要録(通称:保育要録)とは、1年間の保育の過程と結果を記録した書類です。
①「入所に関する記録」、②「保育に関する記録」からなります。
子どもの育ちを支えるための資料として、小学校との連携を目的に5歳児のみ記入します。
新しい環境の中でその子どもへの保育が適切に行われるための手がかりとなるものです。
要録作成の責任者は園長ですが、作成はクラス担任が行い、園長が確認することになります。
幼稚園、幼保連携型認定こども園においても、それぞれ「幼稚園幼児指導要録」「幼保連携型認定こども園園児指導要録」を記入することとなっています。
保育所では5歳児のみ記入するのに対し、幼稚園、幼保連携型認定こども園では毎学年記入します。
それぞれの要録で呼び方や位置づけなどに多少の違いはありますが、子どもの育ちの姿を伝え、次の指導につなぐという大きな役割に変わりはありません。
「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」を活用する
保育所児童保育要録は、小学校の教員に子どもの育ちが伝わりやすいように、小学校との共通言語である「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(通称「10の姿」)を活用して記入することとされています。
幼児期の終わりまでに育ってほしい姿
- ・健康な心と体
- ・自立心
- ・協同性
- ・道徳性・規範意識の芽生え
- ・社会生活との関わり
- ・思考力の芽生え
- ・自然との関わり・生命尊重
- ・数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
- ・言葉による伝え合い
- ・豊かな感性と表現
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は到達目標ではなく、小学校以降につないでいく子どもの育ちつつある姿です。
つまり保育所児童保育要録には、子どもがどのような発達過程にあるか、それがどのような経過をたどると考えられるかを書く必要があります。
10項目すべてについて記入する必要はありません。
小学校の教員にもぜひ継続してもらいたいことについて、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の言葉を使って伝えることが求められています。
項目別の記入ポイント&記入例
「保育所児童保育要録」の「保育に関する記録」は、主に①最終年度の重点、②個人の重点、③保育の展開と子どもの育ち、④特に配慮すべき事項、⑤最終年度に至るまでの育ちに関する事項の5項目からなります。
①最終年度の重点
最終年度のはじめに保育計画として立てた、クラスの保育の目標を書きます。
クラスのどの子どもについても同じ文言となります。
記入例
- ・友だちとの生活や遊びのなかで、自分なりに面白さを追求したり課題に取り組んだりする。
- ・一人ひとりのよさを認め合い、友だちとのかかわりを深めていくことで、ともに力を合わせて目標に向かい、達成感や充実感を味わう。
②個人の重点
最終年度において、一人ひとりの子どもに意識して育んできた点を記入します。
これは結果的に得られるものであり、はじめから定めるものではありません。
記録を読み返し、その子どもとのかかわりで大切にしてきたことを書くようにします。
記入例
- ・自分のやりたい気持ちと同じように相手にやりたい気持ちがあることに気づき、互いに意見を言いながら遊びを発展させようとする。
- ・安心できる場所で、好きな友だちとの関係を軸にして、遊びが楽しくなるように考えたり工夫したりして遊び込むことで、ほかのクラス・年齢の子どもたちへと関係を広げる。
③保育の展開と子どもの育ち
最終年度における一人ひとりの子どもの発達の姿のなかで、5領域のねらいから見て、特に育ったと思われることを書くようにします。
その子どもが夢中になって取り組んだ活動(遊び)で経験したことを通して書くことが大切です。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を活用した記入例
自立心
折り紙に興味をもち、折り方の本を見ながら折っている。むずかしい形にも意欲的に取り組み、午前中いっぱいかかってようやく鶴が完成すると、「一人で折れたよ」と誇らしげに保育者に見せに来た。
思考力の芽生え
色水遊びでは、赤い色水と青い色水を混ぜると紫色になることに気づいた。その後、黄色と青、赤と白など、ほかの色では何色になるか予想しながら、実際に試して確かめていた。
④特に配慮すべき事項
子どもの健康の状況など、就学後に配慮が必要なことがあれば書きます。
気になることや子どもが克服すべき課題を書く必要はありません。
⑤最終年度に至るまでの育ちに関する事項
子どもが入所してからを振り返り、どのような人やものごとと、どのようにかかわり合いながら育ってきたか、どのような子どもに育ったかを総合的に書きます。
記入例
入所した当初は、母親から離れる際に不安から泣いていたが、保育者と一緒に遊んだりするなかで、好きな遊びをするようになる。その後、徐々に身のまわりのことに興味をもつなど安定して園生活を送っていた。幼児クラス進級当初、新しい保育者に躊躇したり、よく遊んでいた友達の強い口調に苦手意識をもって登園を渋ることもあったが、4歳児クラスの終わりごろには、好きな遊びや当番活動に意欲的になってきた。
最終年度は好きな遊びに意欲的に取り組んだりするなかで、友だちともよく遊ぶようになってきた。
記入のコツと注意点
日々の保育記録を要録につなげる
日々の保育記録には子どもの様子や保育者の配慮、対応などが具体的につづられています。これが、要録を作成するうえでの基礎資料となります。
日々の保育記録に何げなく書きとめてきたことも、その経過を追いかけることで、あらためて子どもの心の揺れ動きや葛藤に気づかされることがあります。
日々の保育記録をもとに、1年間をいくつかの時期に分け(学期または期ごと)、一人ひとりの子どもの姿をまとめてみましょう。
保育の経過記録にあらわれた子どもの内面の育ちは、そのまま要録に生かされます。
小学校側に伝わりやすい表現にする
活動の場面を詳しく書いても、保育現場を知らない小学校の教員にはイメージしにくいことがあります。
客観的でだれにでもわかる表現を心がけましょう。
マイナスな表現・強すぎる表現は避ける
その子のマイナスな点をクローズアップして書く必要はありません。
できるだけプラスにとらえて書くことが大切です。
また、例えば「パニック」などの強すぎる表現は、その子に悪いイメージを抱くことにつながるので避けるようにします。
保育者だからこそ感じとれる子どもの育ちを、小学校に伝えよう
小学校における子どもの指導に活かされ、よりよい教育活動が展開されるために重要な役割をもつ保育所児童保育要録。
本記事でご紹介した書き方のポイントや記入例を参考に、日々の保育をしてきた保育者だからこそ感じとれる子どもの育ちを、小学校に伝えていきましょう。
もっと知りたい方に! おすすめ書籍
本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。
幼稚園、保育所、認定こども園対応 子どもの育ちが見える「要録」作成のポイント ①日々の保育を記録する→②1年間の保育記録を振り返る→③要録にまとめるという3ステップを丁寧に解説! 神長美津子、阿部和子、大方美香、山下文一=著
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