ケアマネジャーの実践に活かすヒント集
本連載は、2007年に『ケアマネジメント実践ノート』として連載した内容をリニューアルして再掲するものです。あれから15年がたち私たちの実践には、変わったこともあれば、変わらずに大事なこともあります。
コロナ禍もあって、大変さが増すばかりのケアマネジャーの仕事ですが、大変さ以上の魅力がつまった仕事でもあります。「難しい……」を少しでも「面白い!」に変えていけるヒントをお伝えしていきたいと思いますので、最後までお付き合いくださいませ。
第2回 こんなはずじゃなかった(1)こんなに仕事があるの?
吉田光子
郡山ソーシャルワーカーズオフィス代表。ソーシャルワーカーとして病院、特養、老健、在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所等に勤務した後、独立。個人・グループに対するスーパービジョンや各種研修の講師等を行う。
ケアマネの仕事ってこんなにあったの?
初めてケアマネとして働く前に、みなさんはケアマネの仕事のことをどんな風に思っていましたか? 机に座ってひたすらパソコンとにらめっこしている人とか、電話したり、出かけたりなんだか落ち着かない人といった印象でしょうか。
実務研修では、ケアプランの作り方については教わったけれど、実務の全体や、実際に何をするのかについては、あまりイメージを持てなかったのではないでしょうか。実習という限られた期間では、なかなか全体像はつかめませんよね。ですから、居宅介護支援事業所に勤務することになり、オリエンテーションで説明を受けてびっくりした人も多いのではないかと想像しています。
なにしろ、1週間、1か月の間にやるべきことがたくさんあって、利用者さんの自宅への訪問を中心に、入退院への対応を含めて個別対応も多く、一体何から手をつければいいのか……目が回る思いになった人も少なくないと思うのです。
以下に簡単に毎月しなければいけないことを挙げてみます。
- ●給付管理(実績管理を含む)
利用者一人ずつのサービスおよび事業者ごとに、提供票を作成し、翌月計画通りに実施されたかどうかを確認する業務。 - ●モニタリング
利用者一人ずつ現在の提供サービスでよいのか、利用者とその環境の変化の有無の確認、変化に対する対応の必要性の判断、今後の変化予測をする業務。 - ●認定期間の管理
状態に変化に伴う介護度の変更の要否確認し、必要時に手続き代行する。また、認定期間の満了に際し更新の要否確認の上手続き代行する。要支援の変更が見込まれる際には包括との連絡調整を含む業務。
効率的に進める!
簡単に挙げただけでも膨大な業務量で、目の前が真っ暗になりそうです(笑)。でも、よくよく見ていただくと、重なる部分もありますし、実は、そのなかの一つをすればいいことも多いのです。
事業所全体で行う仕事、給付管理などは、各自が担う部分を明確に把握しておけばそれほど慌てる必要はありません。まずは自分の担当する利用者のサービスをきちんと理解し、翌月分の利用票を作成してあれば、事業者ごとの提供票はソフトが対応してくれます。つまりあなたがしなくてはいけないことは、責任をもってサービスを組み、利用票として作成し、同意を得ておくことです。そして月初めには、サービス事業所から送られてくる実績を通して、利用状況やサービス内容の修正の要否について考えておくのです。
これを、実績を打ち込むだけの作業と考えると苦痛でしかなくなります。実績を見てデイサービスを休んでいることがわかったときに、「ああそういえば、体調が悪いといっていたからかな」とすぐに理由がわかれば納得できますし、モニタリング時に「その後の体調の確認をする」と次の行動につなげることができます。反対に「えっ、休むなんて聞いていない。何があったのだろう」という場合には、まず、なぜ連絡が入らなかったのかを考える必要があります。本人からも事業所からも連絡がなかったとしたら、その原因を考え、ケアマネとして次にどう動いたらよいかを考える機会としましょう。
このように実績管理からも次の仕事につながります。予想通りの結果であれば、モニタリングに行った際に確認すべき項目は、現行サービスの効果や継続の要否だけでしょう。しかし、予想外であった場合は、その内容によって再アセスメントをするのか、事業所に対する利用者家族の思いに耳を傾けるのか、ほかのサービスの提案をするのかなど、仕事内容が変わってくるのです。
つまり何が言いたいのかというと、「ケアマネジャーの仕事は、たくさんあるように見えて実はひとつながりのもの」だということです。それが理解できると、やらなければならないことに追われるのではなく、何からやればいいのかが見えてくるのです。
まるで、迫りくる作業に追われているだけのように思える「こんなはずじゃなかった」から、自分が仕事を管理する意識を持つことで、ケアマネの仕事が実感でき、やりがいにつながっていきます。予想を立てて動けば結果が持つ意味を考えることができます。最初はわからなかった、一人ひとりの利用者の思いや大切にしていることがわかってきます。そうなるとこの方には私はこの部分でお役に立てるなとか、あの方は自分で決める方だから私は情報提供をすればいいんだな、などと個別の支援の形が立ち上がってくるのです。
- 〔吉田光子先生の著作〕
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