メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第26 回② 石塚 惠 株式会社プライム 代表取締役
目指すのは、住まいに困った方たちを断らない不動産屋。
住と食の両面から支えて地域に根付く。

株式会社プライム 代表取締役
石塚 惠(いしづか めぐみ)
1966年、東京都に生まれ横浜市で育つ。エステ業界で働いていたが、30歳の頃、知り合いの社長に声をかけられ不動産業界へ。働いている時に高齢者や障害者、児童養護施設出身で身寄りがいないなど、「部屋を借りたくても借りることができない人」がたくさんいることに驚く。実母の介護がきっかけとなり、介護保険外のサービスをもっと手軽に使えたらという思いから、2009年に市民団体「たすけあいネットMC」を立ち上げ、家事サービスを開始。2011年には「ワンエイド」としてNPO法人化する。住宅困窮者に確実な支援をするためには、自分でやるしかないと2012年、「ワンエイド」に隣接して不動産会社「株式会社プライム」を設立する。代表取締役。全日本不動産協会 神奈川県本部 さがみ支部 副支部長を務める。


  • 株式会社プライム
    神奈川県座間市相模が丘4-42-20
    046-259-9714
    http://prime2421.com/

取材・文:原口美香


──前回では石塚さんが不動産業界に入り、独立するまでのことをお話いただきました。
今回は立ち上げてからのことを伺っていきます。
  立ち上げからは順調だったのでしょうか?

  NPO「ワンエイド」に来る相談の多くは住まいの問題でした。相談を受けて他に繋げられる場所があれば良かったのですが、当時はそういう場所がなかったのです。自分たちで立ち上げれば、NPOも不動産も思うような支援に繋げられると思っていました。
  2012年に不動産会社「株式会社プライム」を立ち上げたのですが、最初はお客さんが全然来なくて、資金的にも自転車操業のような感じでした。「ワンエイド」の方に相談に来た方を住み替えに繋げなければいけないのですが、実際借りづらい方なので、一緒に探してもやっぱり借りられなかったということもありました。壁を感じましたね。
 当初は借りづらい方専門の不動産屋をやろうと思ったのですが、「それだけではやっぱりダメなんだ、一般の人もやりながら、そういう方たちを断らない不動産屋になればいい」というように考えが変わっていきました。持っている管理物件が少ないと売り上げは上がらないので、徐々に増やしていこうと外回りの営業にも力を入れていきました。
 3年くらい経って、NPOの「ワンエイド」がちょっとずつ市役所と連携できるようになってきたのです。生活保護を管轄する課の職員さんがわざわざ、「ワンエイド」を訪ねて来てくださった。市役所って行くところで、来てくれるなんて思ってもみなかったので驚きました。「今度、自立支援という制度ができるので、協力してもらえませんか?」と。市役所も困っていて、民間で連携できるところを探していたのです。それで「ワンエイド」が相談窓口のひとつとして関わることになりました。窓口になったところで借りづらい現実は変わらないのですが、生活保護の方だったら家賃が滞ることがないので、逆に安心な側面もあります。市役所と繋がるようになってから、だんだんと忙しくなってきました。

──NPOの「ワンエイド」と不動産会社の「プライム」の両側から支援をしていくということですね。
具体的にはどのようなことをされていたのでしょうか?

 「どうしたら借りられますか?」という相談ですが、住まいの問題ですと専門知識が必要ですよね。私たちは不動産会社出身なので、条件をクリアするための方法を考えて住み替えに結び付けていきます。市役所から紹介されて、相談は「ワンエイド」、契約は「プライム」という流れを作ったのです。それに加えて、住まいに困っている方を借り上げアパートで一時的に保護する事業(一時支援事業)も市役所からの委託をいただけるようになりました。それまでは赤字で、持ち出しすることが多かったのですが、経営もだんだんと安定していきました。
 その他、「ワンエイド」では、フードバンクの活動もしています。住まいに困っている方は、食べ物にも困っていて、食と住の両方から自立を支援することが必要なのです。最初は資金もないので、「食べ物ください」と誰かが来た時に自分たちのお弁当を差し出すこともありました。でもそれでは立ち行かないので、「セカンドハーベスト」というアメリカのフードバンク団体にお願いして支援をしていただけることになったのです。大和市に倉庫があるので、当時は非常食のようなものを分けてもらいに定期的にトラックで行かせていただいていましたね。市役所も周知の広報のような役割も兼ねてくれて、次第に市民の方から寄付をいただいたり、マルイやダイエー、らでいっしゅぼーやなどの企業からの寄付も増えてきました。そのおかげで食べ物を取りに来た方にも、栄養のバランスよく渡すことができるようになりました。

──市役所からの委託をはじめ、協力してくれる企業も増えていったのですね。
次回は現在の様子などを中心にお話を伺っていきます。

フードバンクの一例
現在は広く知られ、地元の方からの寄付も多くいただける

●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃいましたら、terada@chuohoki.co.jp までご連絡ください。折り返し連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ
100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。

花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館