福祉の現場で思いをカタチに
~私が起業した理由 ・トライした理由 ~
介護や福祉の現場で働く人たちはもちろん、異業種で働く人たちのなかにも、福祉の世界で自分の想いを形にしたいと思っている人は、実はたくさんいます。そして、今、それを実現できるのが福祉の世界です。超高齢社会を迎え、これからますます必要とされるこの世界では、さまざまな発想や理想のもとに起業していく先達が大勢いるのです。そんな先達たちは、気持ちだけでも、経営だけでも成り立たたないこの世界で、どんな思いで、どんな方法で起業・トライしてきたのか、一か月にわたって話を聞いていきます。行政への対応や資金集めなど、知られざる苦労にも耳を傾けながら、理想を形にしてきた彼らの姿を追います。
●インタビュー大募集
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花げし舎ホームページ:
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- プロフィール久田恵の主宰する編集プロダクション「花げし舎」チームが、各地で取材を進めていきます。
久田 恵(ひさだ めぐみ) -
北海道室蘭市生まれ。1990年『フイリッピーナを愛した男たち』(文藝春秋)で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
著書に『ニッポン貧困最前線-ケースワーカーと呼ばれる人々』(文藝春秋・文庫)、『シクスティーズの日々』(朝日新聞社)など。現在、読売新聞「人生案内」の回答者、現在、産経新聞にてエッセイを連載中。
第24回③ 遠藤 礼一 特定非営利活動法人 ゆずりはコミュニケーションズ パソコン工房ゆずりは 施設長
気が付いたらこの世界にもう17年。
失語症の症状は人それぞれ、正しく知って接することの大切さを学んだ。
──今回の取材では2名の方にお話を伺いました。
前半の2回は理事である仲俣さん、後半の2回で施設長の遠藤さんをご紹介させていただきます。
特定非営利活動法人 ゆずりはコミュニケーションズ パソコン工房ゆずりは 施設長
遠藤 礼一(えんどう よしかず)
1974年生まれ。運送会社の事務の仕事をしていたが、会社が潰れてしまうというので転職を考えていた20代の終わりの頃、言語聴覚氏士だった父(遠藤尚志氏)の誘いを受けて、福祉や障害のことは全く分からないまま「ゆずりは」の立ち上げから関わることになった。現在3 代目の施設長として8年目を迎えた。サービス管理責任者。
- ゆずりはコミュニケーションズ
パソコン工房ゆずりは
http://www.p-yuzu.com/
取材・文:原口美香
──言語聴覚士の遠藤尚志先生は、遠藤さんのお父様だったのですね。
父は、もともと東京都の職員でした。定年退職と同時くらいに施設を立ち上げました。父が病院とかでそういう仕事をしているよ、と聞いてはいたけれど、実際に現場のことも知らず 、父が言語聴覚士の走りだったというのも、後になって知ったことでした。
僕が20代前半で就職したときは就職氷河期でした。運送会社の事務の仕事に就きましたが、28か29の時、会社が潰れてしまうということになって。転職しようにもなかな仕事が見つからず、そんな時父に「施設を立ち上げるから、職員として来ないか?」と誘われました。正直その時は、「資格もないし、どれだけ持つかな。でも親の顔は立てないと」くらいの気持ちでいたのです。
本当に何も分からなかったし、障害を持つ人と関わることになるなんて思ってもみませんでした。失語症がどういうものか少しづつ勉強させてもらいながら、気づいたら17年経っていました。
現在は施設長になって8年目になります。
──どのようなことが大変でしたか?
まず接し方が分からなくて、相手が何を言っているのかも分からなくて、最初の頃は利用者さんを怒らせてしまうことが多くありました。でも何が原因で怒っているのかも分からない。最初は困ったことが起きると、それこそ仲俣さんに丸投げすることもありました。このままじゃいけないと、障害のことを勉強したり、こんな時はどうすればよかったのかを父に相談したりしながら、少しずつ接し方が分かるようになってきました。
この現場にいても失語症の症状は人それぞれで、聞く方はちゃんとできているけれど話す方が苦手だったり、両方苦手だったり。この福祉の現場にいても分かりにくいことがあります。言葉のイメージだけでなんとなく分かったような気になって接するケースも多く、言葉が出ないために周りの人から知的障害者と勘違いされることもあるので、正しく知って接するということが大切ですね。
父がよく言っていたことですが、失語症の人のリハビリは、一か月を一日として考えるくらいで徐々に時間を重ねてやっていくものだと。ここにいらっしゃる方で長い人では、もう10年以上の付き合いになります。
──ありがとうございました。
次回は、「パソコン工房ゆずりは」の現在の様子について伺っていきます。
(中俣寛也さん作)
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