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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第18回② 井上るみ子 NPO法人「こどものちから」 理事長
きょうだい児がほっとできる居場所を作りたい
元手ゼロ、知識ゼロからNPO法人立ち上げ

NPO法人「こどものちから」 理事長
井上るみ子(いのうえ るみこ)
1958年福島県生まれ。1998年三男を小児がんで亡くしたことなどをきっかけに、国立がん研究センター中央病院小児科の「親の会」で会員の相談に乗る傍ら、「ピアカウンセラー」「家族相談士」の資格を取得。2007年より同病院小児待合室で子どもたちと遊ぶ自主活動を開始。2013年、病児のきょうだい児を支援するNPO法人「こどものちから」を設立。


取材・文:石川未紀


前回は、病児のきょうだい児をサポートする活動をはじめたきっかけを伺いました。

──息子さんを亡くされたという、ご自身の体験もきっかけになったのですね。

 はい。私は三男の闘病中でやってはいけないことをしてしまった、と後悔しているのは家族だけで乗り切ろうとしたことでした。私は子どもたちに「家族みんなで協力して、周りの人に迷惑をかけないようにがんばろう」と励ましてきました。だから娘には、お友達の家に遊びに行っても夕方になったら、お友達宅の迷惑にならないように帰っていらっしゃい、お兄ちゃんたちが帰ってくるまで一人で留守番をしなさいと伝えてきました。一方、高専のお兄ちゃんには、私の愚痴を聞いてもらったり、相談相手になってもらっていたんです。二人とも、その時は受け止めてくれましたが、後で考えるとつらい役を押し付けてしまったと後悔しています。
 家族内だけで何とかしようとせず、もっと周りに助けを求めてもよかったんじゃないか。そして、今、そういう家族を支える側になるべきなんじゃないかと思ったんです。

──その後、NPOを設立されましたね。

 親の会や個人というくくりではなく、もっと社会的な活動としてやっていったほうがいいのではないか、という周囲の勧めもあり、団体を設立しようということになったんです。
 私としたことが「団体を立ち上げる」イコール「NPO」としか思いつかなくて(笑)。
 NPOが何かもわからずに立ち上げを決めました。でも、NPOって大変なんですね(笑)。何も知らなかったので、立ち上げ後一年かけて東京ボランティアセンターに通いつめました。
 設立時の定款が、具体的に何が書いてあるのか見当もつかない。知人からは「そんなにボラセンに通いつめたら、受付の人にうっとうしく思われるよ」と忠告されたのですが、ボラセンの人も本当に根気強く、設立時の定款の意味、私達が出来る内容の定款の書き方、資金の集め方、助成金の申請の仕方、報告書の書き方、会計の処理まで事細かに教えてくれました。
 そして一年後に無事、等身大のNPO法人「こどものちから」に変更することができたんです。

──思いの強さにきっとボラセンの人も圧倒されたのでしょうね。「こどものちから」というネーミングは?

 以前、10歳のお誕生日を病室で一緒に迎えた、音楽が大好きなお子さんとの関係が続いていたのですが、彼が、「子どもって、すごいちからをもっているんだよ」と教えてくれたんです。その子は、私たちにたくさんの気づきをくれる子どもでした。彼から表出されるその言葉を、本当にそうだなと実感したんです。それでその言葉をいただいて「こどものちから」と名付けました。
 病気の子どものきょうだい児を支援する団体というのは、全国的にみても、まだ少なくて、マスコミなどに取り上げられたこともあって、ボランティアをやってみたいという方がたくさんいらしてくれたんです。それで、月二回だった活動を週二回、月曜、木曜と第二土曜、第四日曜のいずれも11時から14時までに増やしました。
 原則4人で活動しています。何か問題があったときにその当人にあたる人、助けを求める人、当人以外の子どもたちを見る人、全体を把握する人というのがそれぞれの役目です。今、思うと一人でよくやっていたなと思います。
 今も全員ボランティアです。後援会員費や、寄付、助成金などで活動費をまかなっています。企業の方も賛同して寄付してくださったりするので、それらもうまく活用しています。

私たちは遊んでもらっているのです


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