福祉の現場で思いをカタチに
~私が起業した理由 ・トライした理由 ~
志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!
【毎週木曜日更新】
第16回 ④ 庄司哲也 昭島デイサービス 晴れのち笑顔 代表
「 希望 を実現し、人生を豊かにする」
将来的には包括的な事業展開を目指す
株式会社SPECIO代表取締役
庄司哲也(しょうじ てつや)
1982年生まれ。2015年より電気事業会社が運営する介護事業の責任者として赴任。デイサービスを統括する。高齢者の多様な悩みを聞くなかで、認知機能低下予防に特化したプログラムを導入した。2019年5月には、より地域に密着した福祉を目指して親会社から独立。現在は、SPECIO代表取締役。
- ▲昭島デイサービス 晴れのち笑顔
http://harenochiegao.com/
取材・文:毛利マスミ
前回は、運営を軌道にのせるまでのご苦労をお伺いしました。今回は、大切にしているケアの内容と将来への展望について、お伺いします。
──「晴れのち笑顔」のケアの特徴について教えてください。
認知症に対するケアを中心にしています。1日1500mLの水分摂取と、1~2kmを目標に散歩を行っています。また、「シナプソロジー」も大きな柱となっています。「シナプソロジー」とは脳科学に基づく、認知機能低下予防のためのプログラムです。「2つの事を同時に行う」、「左右で違う動きをする」といった、慣れない動きで脳に刺激を与えるもので、ゲーム感覚で楽しく行うことができます。「シナプソロジー」は、正解を導き出すものではないので、利用者様は「失敗したらどうしよう」という不安がなく参加できます。
「シナプソロジー」を少し行うだけで、頭が温かくなってきて、脳を使っていることが実感できるんですよ。うちでは、毎日午前と午後の2回、30分くらい実践していて、利用者様のなかには、認知症による耳の聞こえづらさが改善して、会話がしっかりとできるようになった方もいらっしゃいます。
このプログラムはインストラクター制度なのですが、うちの施設ではスタッフ全員に資格取得をさせました。スタッフは持ち回りでお風呂介助や食事の支度などがありますので、「インストラクターがいないからできません」という事態は、回避したかったのです。また、「シナプソロジー」は2人1組のスタッフで行うため、誰と組んでも質の高いプログラムが提供できるのも魅力でした。初期投資はかかりましたが、今では「晴れのち笑顔」の財産ともいえるプログラムとなっています。
──最後に、現在の経営状態と今後の抱負をお聞かせください。
人とのつながりから、少しずつ利用者様は増え、スタッフにも恵まれましたが、創業から3年目までは経営的には大変でした。現在の登録者人数は30名ほど。稼働率も常時90%を超えて、毎日定員がほぼ埋まる状態となっています。事業も安定してきたので、創業から4年目の2019年5月には、株式会社SPECIOとして独立を果たしました。SPECIOとは、ラテン語をヒントに、「希望・願望をかなえる」という意味を込めた造語です。
経営理念は、立ち上げ時から変わらず、「
また、第1回でもお話ししたように、私の核となっている思いは、自分の人生を豊かにすることにあります。5年ほどこの仕事を続けてくるなかで、介護の仕事を通して自分の人生を豊かにしていきたいという思いを、強く抱くようになりました。そのためにもよいケアがしたい。それが自分の誇りや自信、充実につながっていることを実感しています。
今後はリハビリなどを通して、身体機能を改善するお手伝いもしていきたいと考えています。リハビリ特化型デイサービスという形でしょうか。すでに物件も探し始めていて、まずは昭島市内にもう1件。さらに今後は他の地域にも展開していきたいと考えています。将来的にはデイサービス以外に、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業など包括的に介護に関わる事業展開を目指しています。
- 【インタビューを終えて】
- 「シナプソロジー」とはどのようなものか、実演して教えてくれた庄司さん。左手は前後に、右手はトントンと机をたたくような動作をする「すりすりトントン」にトライしました。最初は机の上に手を置いて、次は空中でと、続けるうちに混乱してできなくなってしまいました。「できなくていいんですよ。『シナプソロジー』では間違えた方がほめられるくらいなんですから。いい混乱してますねって話すんですよ」と笑顔で教えてくださいました。体験はほんの数分でしたが、私のおでこのあたりもほんのりと温かくなりました。
- 【久田恵の視点】
- 庄司さんは、異業種から介護分野へ。想定外の人生展開ですね。今や「学歴よりも資格」と言われるこの分野での悪戦苦闘など・・・、思いがけない困難をクリアしていったプロセスが、とてもスリリングですね。自分が豊かな人生を生きたい、誰だってそうでありたいはず、その揺らがない思いで、あきらめずに続けていけば、きっと新しい道が見えてくる、そんな希望を伝えてもらいました。
- 前回までのお話
① ご利用者様の思いや願いをかなえて その人生が豊かになるお手伝いをしたい
② ケアの仕方もマネジメントも、経営も、 すべてを同時進行で勉強する毎日だった
③ 転機となった地域連携ネットワークへの参加 信頼関係が人と人とのつながりを育む
●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃいましたら、terada@chuohoki.co.jp までご連絡ください。折り返し連絡させていただきます。
「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます
本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。
花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館