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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第12回② 淺倉早苗 明日櫻 代表取締役社長
「明日櫻は着物の革命です!」
その言葉に感無量…

明日櫻 代表取締役社長
淺倉 早苗(あさくら さなえ)
1964年生まれ。
北海道東海大学卒業。プロダクトデザイナーを経て、ユニバーサルデザインの着物を考案。2015年、車いすに乗ったまま着られる着物“明日櫻”がグッドデザイン賞を受賞(特許取得)。同年起業。現在、レンタルを中心に全国に向けてユニバーサルデザインの着物を届けている。


取材・文:石川未紀


前回は、誰にでも着られる、着させられる着物をつくろうとしたきっかけと、その開発過程を伺いました。
今回は、“明日櫻”の商品化までと、起業について伺います。


──「誰にでも」着られる着物ということにこだわったそうですね。

 はい。高齢者のための、障がい者のための、車いすのための、という考え方はいやだったんです。誰にでも楽しめる着物、それがいちばんのコンセプトです。
 実は、私は子どもの卒業式には大島紬の“明日櫻”の着物で出たんですよ。誰も気づきません。しかも、帰りはスーツに着替えて車を運転して帰ってきました。そういう使い方もできるんです。いい悪いではなく、今のライフスタイルに合っているんです。

──なるほど。着付けの知識もいらないなら、一人で着付けることもできて、まさに誰にでも着られる着物なのですね。

 だからこそ、開発にはいろいろな状態の方を知ることも大切でした。医療や介護、看護、福祉の方たちともつながっていろいろ情報を収集しました。たとえば、障がいのある方のなかには、じっとしているのが苦手な方もいれば、体をまっすぐにできない方もいる。身長が低い方もいる。今、思い返せば、単なる印象だけでなく、きちんとデータをとって、リサーチすることは大事な作業だったと思います。着物は着るときだけでなく、着ているときにも心地よいかどうかも大事です。着た状態で、トイレなどで問題がないようにするにはどのようにしたらよいのかを、実際に着ていただいた方からお話を伺ったり、介護職の方からの意見を伺いました。そのような話を集約して、分析して、どんな状態の方にも対応しながらも、できるだけ一つの着物で、すべての人たちに対応できる着物を作りたい。そして、どんな困難があっても、着物を着て「ハレの日」を楽しんでもらいたい。その気持ちだけはしっかりと持ち続けていました。
 私は、たくさんの方々の知恵をつなげていけば、必ず工夫次第でできると思っていました。

──実際にできあがって、それで起業されたのですね。

 はい。ホームページなどで発信すると、多くの方から問い合わせがきました。私の感覚ですが、町で見かけるよりも、たくさん車いすの方がいて、そういう方たちがおしゃれを楽しみたい、ハレの日には着物を着たいと思っている、そう感じました。
 テレビや雑誌などにも取り上げていただき、パラリンピックの選手たちにも着ていただくことができました。昨年の成人式に江東区の新成人代表で登壇されたパラカヌー選手の瀬立モニカさんは明日櫻の振袖を着用されました。その際に「着物の革命」と言ってくださってうれしかったですね。 瀬立さんは当初、着物を着ることを諦めておられましたが、明日櫻の着物で振袖を着られて喜んでいただけました。

──それは、お互いにとって最高の出会いでしたね。具体的にはどのような方が利用されているのでしょうか?

 お孫さんの結婚式には着物で出席したい、写真だけは着物で撮りたいという高齢者の方や、障がいのあるお子さん、成人式などで振袖を着たいという障がい者の方などですね。
 今は正絹の着物をレンタルするというかたちでやっています。どうしてもというお声があれば、オーダーでもお受けすることがあります。
 重度の知的障がいのあるお嬢さんも振袖を着て、お化粧をしたら、ふわっとしたいい笑顔をされて、ご両親がとても驚いておられました。私の喜びでもあります。

──ありがとうございました。
  次回は会社の運営についてもお話を伺っていきます。

お父様と晴れ姿で記念撮影

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100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

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花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館