福祉の現場で思いをカタチに
~私が起業した理由 ・トライした理由 ~
志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!
【毎週木曜日更新】
Vol.77 連載第3回
身を持って教えてくれた父を
家族に支えられ在宅で看取る。
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佐々木 眞理子(ささき まりこ)さん
まりちゃん家 代表取締役
【HP】
宮城県美里町にある「まりちゃん家」は、通所介護を兼ね備えた住居型老人ホームです。それは今から29年前、ひとりの主婦が老人ホームに入居していた実父を引き取り、ボランティア活動を始めたことがきっかけでした。
取材・文 原口美香
―前回は自宅を開放しボランティアで「まりちゃん家」の活動を始めたことを中心にお話いただきました。
―今回は町の補助を受けて移転、行政からの委託を受け事業として再スタートした後のことを伺っていきたいと思います。
移った場所は同じ学区にありました。週に1回の活動がこれからは毎日になるわけだから、利用者さんたちはみんな大喜びでした。スタッフも、ボランティアでやっていた時とお給料をもらいながらやるというのは人数的にも制限があるので、働く日数をお互い変えながらやっていました。元々主婦の人たちの集まりなので、自分の空いた時間を活用しやすい働き方ができるようになったと思います。
移転して2年間は社会福祉協議会の中で活動をするのですが、ちょうどその2年後に介護保険が始まりました。社会福祉法人でなくても事業ができるようになりましたから、社協から抜けてNPO法人を立ち上げることになったんです。
2,000年4月1日、NPO法人「ひまわり」として新たな活動を始めました。活動していた場所は町から借りるという形を取り今まで通り通所介護、その近くで一軒家を新たに借りて、グループホームも立ち上げたんです。
ところがその6月に私が身体を壊してしまいました。2か月一生懸命頑張ったのですが、一緒にやってきた人たちにバトンタッチして、一旦そこから離れることになりました。そしたら来ていたお年寄りの方たちが毎日電話をよこすんです。「まりちゃん、大丈夫?」「まりちゃん、まだ来ないの?」って。本当にありがたいなと思って。そうこうしているうちにだんだん身体も良くなってきて、「じゃ家にいるから遊びに来たら? お茶っこのみでもしましょう」と自宅でまた私なりの活動を始めました。それがまただんだん広がって人数も大きくなってくるわけです。
―みなさん眞理子さんに会いたくて、居心地よくて来るのですね。
その頃父はまた脳梗塞を起こして入退院を繰り返していたのですが、具合が悪くなり病院から「もうこれ以上は治らない」と言われて退院してきました。私が家でに面倒をみるようになったので、デイサービスに来ていた人たちの場所を移さないといけなくなったのです。近くにお友達の使っていない家があって借りることが出来ました。一緒に活動をしてくれていた人たちも「いいよ、まりちゃん。私たちがやるからあなたはお父さんの面倒みなさい」と言ってくれて。
父は家で看取ることが出来ました。在宅で看取るって医療も福祉も含めてあの頃は確立されてなかったのです。私は涌谷町というところに住んでいたのですが、地域医療に対する考え方が確立されていた町でしたので、訪問介護や訪問医療、訪問看護の仕組みが整っていて在宅で看取れたんだと思うんです。
退院してきたときに仙骨に大きな褥瘡が出来ていて、その消毒がひとりではできないんですよ。主人も子どもたちも消毒やおむつ交換の時は、夜中でも必ず起きて来て手伝ってくれました。そういうことの一つひとつの経験が今に生かされているというのはありますね。ああいうお看取りの仕方は今、うちの施設では当たり前にさせてもらっていますけれど、みんなそこがネックとなり家でみられないんだと思うんです。父でいい経験をさせてもらいました。
―ご自宅で「まりちゃん家」の活動ができた最初の2年間は、お父様にとって素晴らしいものだったと思います。親孝行されましたね。
それがあったから元気でいられたかも知れないですね。うちの父は人を家に招き入れることが大好きだったんです。「よく来た、よく来た」と言ってね。娘の家なんだけれど自分がそこにいて、みんなが自分を訪ねて来てくれるということが誇りでもありすごく喜びだったと思います。
親孝行と言えるかどうかは分からないのですが、今考えると父親から湯飲み茶碗を投げつけられたことがきっかけになって始まった活動なので、父が身を持って私にプレゼントをくれたんだなと思っています。
―最終回では、現在の「まりちゃん家」の様子と今後の展望などをお伺いしていきたいと思います。
第3回は1月30日(木)掲載
佐々木眞理子(ささき まりこ)さん
昭和27年生まれ、現在72歳。脳梗塞を患い施設に入所していた父を自宅に引き取り、1995年自宅を開放してボランティアでデイサービス「まりちゃん家」を始める。現在は定員25人の通所介護と、部屋数20室の住居型老人ホームを運営。「まりちゃん家」代表取締役。
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