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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第73回③
NPO法人 all smile代表 田村有希さん
慣れることなく、常に学ぶ
その姿勢で着付け、撮影しています

田村 有希(たむら ゆき)さん
NPO法人 all smile代表

ダウン症の長男が通っていた特別支援学校の保護者から「成人の晴れ着姿の撮影をあきらめている」という声を聞く。着付けやヘアメイクの技術を持つ田村さんは、何とかその願いをかなえようと、2009年に「障がい者達の成人を祝う写真撮影会」を発足。2019年NPO法人格を取得。現在、年数回「障がい者達の20歳を祝う写真撮影会」を継続中。Lethe代表。

取材・文 石川未紀

前回は、障がい者達の成人を祝う写真撮影会の様子を中心に伺いました。

――事前に撮影される方のエントリーシートが大事なのですね。

 はい。エントリーシートには体のサイズも書いてもらうようにしています。例えば、大きい方はそのサイズにあった振袖を用意する必要があるので、事前の情報は必須です。足袋に慣れていない方も多いので、感覚が敏感な方は足袋をはく練習をしてもらったり、事前に足袋だけ履いてきてもらったりしています。

――確かに、慣れていないと違和感がありそうです。

そうですね。全部ではないですが、障がいの特性などを把握したうえで、撮影会の順番も決めていきます。
 コロナ禍では、できる限りほかの撮影される方と合わないよう配慮したり、別のご家族の方は別室で待機していただいたりしました。コロナが明けた後も、ほかの人が気になる方もいますし、重度の身体障がい者の方もいますので、順番もとても大事なんです。

――障がいの種別などに制限はありますか?

 いいえ、どの障がいの方も受け入れています。身体障がいの方も毎年1~2割くらいいらっしゃいます。
 より障がいの重い方に利用していただきたいという思いはありますが、それによって可否を決めてはいません。というのも、繰り返しになりますが、障害者手帳などだけでは判断できないことも多いからです。軽度であっても撮影が困難な方もいますので。

――身体障害手帳や療育手帳の級数よりも、着付けや撮影により困難を感じている方に利用していただくということでしょうか?

 そうですね。
 撮影当日は、受付を済ませたら衣装選びから始まります。そこから、ヘアメイク、着付け、撮影と続きます。できる限り短時間で、かつ、緊張させないよう、こちらはリラックスして楽しみながらやるよう努めています。中にはご家族の方のほうが緊張していることもあるのですが、ご家族の緊張が本人に移ってしまうこともありますので、ご家族の方にも楽しんで過ごしていただけるように配慮しています。
 当日は撮影までで終了です。後日、見本写真を送り、六つ切りの写真にするものを選んでいただきます。出来上がった写真をご自宅に送るという流れになっています。私たちスタッフが障がい者の方とそのご家族の方と接するのはたった一日、しかも1時間半くらいかもしれません。けれども、晴れ姿を写真におさめることは、そのご家族にとっては一生の思い出になることです。私たちもそれぞれのご家族との出会いを大切にしたいと考えています。

――現在はどのくらいの頻度で撮影会をされているのですか。

 発足以来、だいたい年に1~2回ですね。最近は2日間にわたって撮影していまして、一日12名、二日間で24名ですね。申し込み状況によってはもう少し多くなったりしたこともありました。また、どうしてもその日程ではおさまりきれず、別の日程で行ったこともあります。発足当時から関わってくださっている亀有スタジオのカメラマンの方は、お父様から息子さんへ代替わりしていますが、とても慣れていて助かっています。
 ヘアメイクや着付けの方もこれまでは交通費+アルファで手伝っていただいていましたが、2019年にはNPO法人になり、会員制となりました。会員から会費をいただいているので、現在は、その会費等から、プロのお仕事として報酬をお支払いしています。まだまだ会員は少ないのですが続けていくためには必要なことだと思っています。

ありがとうございました。

着付けはできる限り素早く

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100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

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花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館