メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

【毎週木曜日更新】

第70回③
NPO法人 市民後見☆北ネット 代表理事 水上人江さん
市民後見人の認知度を上げるため
多岐にわたる活動を

NPO法人 市民後見☆北ネット
代表理事 水上人江さん

1949年生まれ。社会的課題に関心を持ち、子育て中は働きながら、保育園の課題解決に取り組む。定年になる1年前に受講した東京大学の「市民後見人養成講座」で市民後見の重要性を実感。修了後に仲間と社会福祉協議会が行っている地域福祉権利擁護事業の生活支援員に応募して活動しながら、2010年「市民後見☆北ネット」を立ち上げる。2016年NPO法人格を取得。後見受任のほか、啓蒙活動なども積極的に行っている。

取材・文 石川未紀

――前回は具体的な活動内容や地域で活動する重要性について伺いました。市民後見人の認知度を上げるためにさまざまな活動をされているのですね。

 はい。自分の将来について不安があるけれど、どこに相談してよいのかわからないという方のためにHPをリニューアルし、わかりやすく、相談しやすいように工夫しています。行政との連携も大事だと考えています。

――利用したいという方は増えているのでしょうか?

 ご自身の財産管理のことですから、すぐに第三者にゆだねてみようとはなりません。ですから、信用や信頼を獲得するために、私たちも常にメンバー同士で学び合いを重ねています。行政も市民後見の重要性は十分に認識しているのですが、同じ東京23区内でもまだまだ温度差があります。品川区や世田谷区では独自に市民後見人の養成講座を開いて、受講後の市民が受任を行うケースが増えています。私たちも市民や行政にもっとアピールしていかないといけないところです。

――コロナ禍で難しい局面もあったのではないでしょうか。

 そうですね。これまで対面で行ってきた講座やセミナーがすべてなくなりました。東大の「市民後見人養成講座」などもオンライン等での開催が増えたようです。私たちが対面で受講していたときは、そこでお互い同じ地域に住んでいるということもわかりましたし、他の受講生と交流する中で得られた情報もあり、受講後の活動にとても役立ちました。いまはそうした関係性が途絶えてしまいました。

――なるほど。オンラインは便利そうですが、そういう一面もあるのですね。

 コロナ禍が明けた後も、完全に対面に戻らない部分もありますし、私たちも対面での講座などが完全に復活できていないところがもどかしいところです。
 とは言っても、今後は任意後見の必要性が増してくるので、歩みをとめるわけにはいきません。
 一方、利用を検討している方の中には、後見人の仕事を「ケアマネ」や「ヘルパー」の方たちの仕事と同じと思われているような誤解も多くあります。説明をしてもなお、「それはケアマネさんがやってくれた」と言われたケースもあります。実際、ヘルパーが日常のお金の管理をしたり、ケアマネが代行するケースもあるようですが、これは介護者の仕事ではありません。せざるをえない事情があるかもしれませんが、今後こうしたケースが増えれば、ケアマネもヘルパーもオーバーワークで本来の仕事がまわりませんね。私が受任していたケースでは、施設の方から、「お金の管理についての心配がなくなり、助かる」というお声もいただいています。また、利用者の方との会話の中で気づいたことを施設側に伝えることもありました。そのようなこともしっかりアピールしていきたいです。

――なるほど。

 現在、私たちの地域では、市民後見人が法定後見を受任するには、利用者の資産の額に一定の制限があったり、親族関係に問題がないなどの条件があります。また、今のところは施設入居の人というケースに限られています。私たちは同じ地域で暮らす人たちと長く付き合いながら、生活全般を見守れる存在でありたいと思っていますので、自宅で過ごしたいという方のサポートももっとしていきたいと思っています。
 成年後見制度も今後見直しがはかられることになっているので、良い方向への制度の改革も期待し、見守りつつ、私たちも啓蒙活動を続けていきたいと思います。

ありがとうございました。

成年後見制度と市民後見人をテーマにしたセミナー。市民の関心は高い

●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃいましたら、terada@chuohoki.co.jp までご連絡ください。折り返し連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ
100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。

花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館