高齢者が気をつけたい病気とは? 骨粗しょう症の症状や特徴、医療職への伝え方を紹介!
高齢者が気をつけたい病気とは?
骨粗しょう症の症状や特徴、医療職への伝え方を紹介!
高齢者は、加齢にともなうからだやこころの変化により、さまざまな病気を抱えていることが少なくありません。それぞれの病気ごとに注意すべき症状や進行程度、服用するくすりなどが異なるため、どのような病気が多くみられるのか介護職やケアマネジャーは把握しておく必要があります。
この記事では、高齢者が気をつけたい病気として「骨粗しょう症」を取り上げ、症状や特徴、医療職への伝え方を紹介します。
【記事の監修者】
鶴岡浩樹
日本社会事業大学専門職大学院教授
つるかめ診療所副所長
順天堂大学医学部を卒業後、 自治医科大附属病院総合診療部などでの勤務を経て、2007年につるかめ診療所(在宅診療)を開設。2013年より日本社会事業大学専門職大学院教授。
- 目次
1. 加齢にともなうからだとこころの変化
加齢とともに、私たちのからだはさまざまな変化を経験し、視覚、聴覚、運動器、循環器など、からだの多くの機能が低下していきます。
からだの変化
視覚
- ・水晶体が硬化し調整能力が低下することで、近くのものがぼやけて見える(老眼)
- ・水晶体が白濁することで視界がかすむ白内障も、加齢とともに増加する
聴覚
- ・高音や子音の聞き取りが難しくなり、会話の内容を理解することが困難になる
- ・特に、大人数での会話や騒音下では、聞き間違いが増える傾向にある
運動器
- ・骨量の減少で脊椎や関節が変性していく
- ・骨量の減少は、骨粗しょう症のリスクを高め、骨折しやすくなる
循環器
- ・心臓壁が線維化し、弾力性が失われることで、心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみなどの症状が現れやすくなる
- ・これらの変化は生活の質を低下させ、さまざまな病気のリスクを高める可能性がある
こころの変化
認知機能の低下
- ・短期記憶が低下しやすい(もの忘れが多くなる)
- ・経験した出来事に関するエピソード記憶が低下しやすい
意欲や感情の変化
- ・心身機能の低下や病気などによる健康喪失感、友人や家族の死による人間関係の喪失感などが生じる
- ・喪失感による不安が増大し、抑うつ状態になる
2. 高齢者の病気の7つの特徴
高齢者の病気の特徴として、以下の7つがあげられます。
- ①1つの病気がよくなっても、他の病気は悪化するなど病態が複雑
- ②個人差も大きく、症状が定型的ではない
- ③高齢者の病気の多くに生活習慣病が関係している
- ④体液バランスが崩れやすく、脱水になったり、熱中症が重症化しやすい
- ⑤からだの機能低下により薬が代謝されにくく、副作用が生じやすい
- ⑥環境の変化をきっかけに認知機能の低下や精神症状がみられる
- ⑦ちょっとした出来事で日常生活動作(ADL)が低下しやすい
3. 高齢者が気をつけたい病気 骨粗しょう症とは
骨粗しょう症とは、骨量が減少し、骨の微細な構造が変化することで、骨がもろくなってしまう病気です。 骨粗しょう症は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いため、「静かなる病気」とも呼ばれています。
加齢、カルシウムやビタミンD摂取不足、運動不足、喫煙などさまざまな要因によって、古い骨を壊し、新しい骨をつくる(骨形成)という骨代謝のバランスが崩れ、骨形成が追いつかなくなることで起こります。
おさえておきたい症状!
- ・背中の丸み(円背)
- ・身長が縮む
- ・腰痛や背部痛
※骨粗しょう症自体には症状はない。ちょっとしたことで骨折しやすくなる
4. 骨粗しょう症の進行
骨粗しょう症が進行すると、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。特に骨折しやすい部位は、脊椎(背骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根)、橈骨遠位端(手首)、上腕骨近位部(肩に近い部分)になります。
骨折にいたらなくても、他の病気を引き起こす可能性も・・・
円背からバランス能力の低下、背部や胸周囲の筋力低下による呼吸機能の低下、誤嚥性肺炎のリスク増大、逆流性食道炎などを起こすおそれがあります。
5. くすり
骨粗しょう症の薬としては、骨吸収抑制剤、骨・カルシウム代謝調整薬があります。効果としては、古い骨を壊す働きを抑え、骨の量全体を増やすこと、食事からカルシウムを十分に摂取できない際に体内にカルシウムを補充することなどの効果があります。
薬によって胃炎、胃痛、嘔吐、吐き気、皮膚搔痒などの副作用がみられるので、注意して服用する必要があります。
6. 医療職へ伝えるとき
高齢者のケアにおいて、医療職との連携は非常に重要です。しかし、どのような様子なのかうまく伝わらないと、対応も遅れてしまうことになります。
例えば、転倒があり骨粗しょう症が疑われる場合には、医療職に次のようなことを伝えると、上手に伝わります。
伝え方のコツ!
- ・患部の様子を伝える
腫れていないか、触れると痛くないか、動ける状態なのかなどを伝える - ・どのように転んだのかを伝える
骨折した部位の特定につながるように、「手をついた転び方をした」など転んだときの状況を具体的に伝える
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