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障害福祉サービスってどうやって使うの?
利用の流れ、受給者証、利用者負担についてわかりやすく解説!

初めて障害福祉サービスの利用する人のために、手続きの流れからお金の話までまるっと解説!

目次

 「障害福祉サービスを利用したいけど、どうやって申請すればいいかわからない」「障害福祉サービスの利用方法について聞かれたけど、うまく答えられなかった」……そんな経験はありませんか?
 障害福祉制度は、専門家でない人にとっては複雑でなかなか理解しにくいところもあるでしょう。この記事では、障害者総合支援法のサービス利用の流れをわかりやすく解説します。

1.サービスを利用するには

サービスの対象者

 障害福祉サービスの対象者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害を含む)、難病患者、障害児などで、それぞれ障害者総合支援法で定められています。
 例えば、身体障害者では「身体障碍者福祉法第4条別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者」とされています。
 身体障害者では手帳の取得が条件になっていますが、その他の障害では、手帳の取得は必ずしも条件ではありません。

サービスの利用は申請から

 障害者総合支援法のサービスを利用するには、まずは市町村へ申請をする必要があります。役所の担当窓口の名称は、「障がい福祉課」や「福祉支援課」など市町村によって異なりますので注意しましょう。
 なお、そもそもどんなサービスがあるかなど、不安なことやわからないことがあれば、ここで相談することもできます。
 窓口で所定の書類を記入して提出したら、障害支援区分の認定に移ります。

3.サービス利用の流れ

 障害福祉サービスの利用の流れをまとめると、次のような形になります。

①障害支援区分の認定

まずは障害支援区分の認定を行います。認定に必要なものは二つ。認定調査と、医師意見書です。
 認定調査では、申請者の心身の状況や環境面などについて、80の調査項目に基づいて聞き取り調査を行います。申請者に支給が必要か、またどの程度の支援が必要かを判断する大事な資料となります。
 医師意見書は医学的観点からの留意点等を記載した書類で、申請者の障害の状況を把握している主治医が作成します。
 この二つの資料を用いて、障害支援区分の判定を行うことになります。

 まずは認定調査の結果と医師意見書の一部項目を使い、コンピュータによる一次判定を行います。
 その結果と、コンピュータには判断できないもの(一次判定で使用されなかった医師意見書の内容、認定調査での特記事項など)を踏まえて、市町村審査会による二次判定を経て、申請者の障害支援区分が決定することになります。
障害支援区分は「非該当」もしくは「区分1~6」の7段階。どの区分に該当するかによって、利用できるサービスが決まります。

②サービス等利用計画案の作成

 実際にサービスを利用する場合は、まず指定特定相談支援事業所の相談支援専門員がサービス等利用計画案を作成します。
 これは、本人の意向や課題、利用するサービスの内容や量、援助の方針などが記載されるもので、指定特定相談支援事業所の相談支援専門員が本人や家族と面接・聞き取りを行ったうえで作成します。
 市町村は、この計画に基づいて支給決定を行います。
 この聞き取りを踏まえて、相談支援専門員が本人の希望する生活の実現や課題の解決のための適切なサービスを総合的に判断して調整・検討しながら利用計画案を作成します。

③サービス担当者会議

 市町村による支給決定後、実際にサービスの提供を担当する事業所の担当者を交えてサービス担当者会議を実施します。
 サービス等利用計画案をベースに、本人や家族の状況や希望、総合的な援助の方針、各事業所の支援内容などについて情報共有、確認、調整が行われ、サービス等利用計画を作成します。

④サービス等利用計画の作成

 サービス担当者会議を踏まえてサービス等利用計画を作成します。
 サービス等利用計画は利用者本人の意向に基づき作成され、本人の希望する生活とその実現のための援助の方針、利用するサービスの種類や量など課題解決のための具体的な手段が記載されます。
 これに記載されるサービスとは障害福祉サービスに限らず、訪問看護などの医療サービスや金銭管理、インフォーマルな支援などが総合的に盛り込まれ、本人の生活全体が考慮されたものとなります。
 複数のサービスが利用計画に一元化されることで、本人や家族、支援者にとってもサービスの全体像や支援の方向性、各事業所の役割や支援内容などが把握しやすいというメリットがあります。

 指定特定相談支援事業所が行うこれら一連の支援が「サービス利用支援」です。サービス利用支援は全額公費で賄われ、利用者の負担はありません。
 なお、指定特定相談支援事業所を利用せず、自身でサービス等利用計画をつくること(セルフプラン)も可能です。

⑤サービスの利用

 作成したサービス等利用計画に基づき、サービスを利用します。
 サービスを利用するにあたっては、市町村からの支給を受けていることを示すための受給者証が発行されます。

⑥モニタリング

 障害福祉サービスの利用が開始したはいいものの、当初作成したプランが実際にはうまく機能していなかったりや、目標の変化や症状の状況によって、当初のプランが合わなくなることもあるでしょう。
 そのため、定期的に相談支援専門員が本人や家族と面接し、サービスの利用状況や本人の満足度などを丁寧に聞き取り、必要に応じてサービス等利用計画の見直しを行うことになっています。
 これをモニタリングといい、その内容はモニタリング報告書として市町村に提出します。

 モニタリングをどの程度の頻度で行うかは、国の示す基準や個別の事情を踏まえて相談支援専門員が提案し、市町村が支給決定と同時に決定します。
 例えば、新規のサービス利用者やサービス内容に大きな変更があった場合は、きめ細やかに対応するため、3か月目までは毎月モニタリングを行うことが標準とされています。
 このように、モニタリング期間は「毎月、3か月ごと、6か月ごと」など本人の状況と支援内容を踏まえて個別に決定され、受給者証に記載されます。

4.利用者負担

応能負担=所得に応じて負担額が決まる

 障害福祉サービスを利用する場合、利用者はそのうち一定の金額を負担することになり、これを利用者負担といいます。
 2010(平成22)年以降、障害福祉サービスの利用者負担額は、利用者の所得に応じて決まる(=応能負担)ことになっています。
 これは、受けたサービスの量によって利用者負担額を決める(=応益負担)と、障害が重い人ほどサービスを多く利用するため負担額が大きくなってしまい、必要なサービスを利用しづらくなってしまうためです。

利用者負担の上限額

 利用者負担が過大なものにならないよう、障害福祉サービスの利用者負担には月ごとの負担上限額が決められています。
 その上限額は世帯の収入状況によって4区分に分けられ、例えば、収入が概ね600万円以下の世帯が対象となる「一般1」という区分の場合、負担上限月額は9,300円です。ひと月にこの上限額に達しない場合は利用料の1割負担となりますが、上限額を超えた分の利用者負担はありません。

 なお、利用料は各サービスごとに告示で定められています。複数のサービスを利用する場合も、利用料を合計した状態でため負担上限月額以上の利用者負担はありません。

利用者負担の軽減

 月ごとの上限額のほかにも、利用するサービスなどの形態別に自己負担、食費・光熱水費などの実費負担に対しさまざまな軽減措置があります。このような措置は、所得の低い利用者の負担を軽減するためのものです。

●利用者負担の軽減措置の種類

  入所施設(20歳以上) グループ
ホーム
通所施設
(事業)
ホーム
ヘルプ
就労定着支援・自立生活援助 入所施設(20歳未満) 医療型施設(入所)
自己負担 利用者負担の負担上限月額設定
高額障害福祉サービス等給付費 医療型個別減免
    事業主の負担よる就労継続支援A型の減免措置        
生活保護への移行防止
    高齢障害者の利用負担      
食費・光熱水費等 補足給付(食費・光熱水費) 補足給付(家賃負担) 食費の人件費支給による軽減措置     補足給付
(食費・光熱水費)
 

医療型個別減免:医療型施設の利用者に適用される軽減措置

 病院などへの長期の入院に加え常時の介護を必要とする利用者に対して行われる、機能訓練や療養上の管理、看護、医学的管理のもと行われる介護、日常生活上の世話などのサービスを療養介護といい、このうち胃ろう管理など医療にかかわるものを療養介護医療といいます。
 療養介護医療は本来、健康保険の対象となる医療費であり、障害福祉サービスの介護給付費とは異なります。しかし、療養介護を利用する場合、障害福祉サービスである療養介護の自己負担額に、医療費と食事療養費を合算して上限額が設定されます。この医療費と食事療養費が減免される仕組みを医療型個別減免といいます。
 例えば20歳以上の利用者の場合、世帯区分が「低所得」(市町村民税非課税世帯)の人は、少なくともその他生活費として25000円が手元に残るように利用者負担が減免されます。

高額障害福祉サービス等給付費:複数のサービス利用がある場合の軽減措置

 一つの世帯で障害福祉サービスなどの利用者が複数いる場合や、障害福祉サービスや介護保険サービスなど複数のサービス利用がある場合、その世帯における利用者負担が大きくなります。
 そのため、世帯の負担を軽くする観点から、同一世帯における利用者負担額の1か月の合算が基準額を超える場合に、高額障害福祉サービス等給付費として超えた分の利用料が払い戻し(償還払い)されます。
 この給付を受けるには市町村への申請が必要となり、基準額は世帯の収入状況により異なります。

●高額障害福祉サービス等給付費の合算対象となるサービス

障害福祉サービス 障害者総合支援法に基づくサービス
居宅介護、短期入所、重度訪問介護、就労継続支援など
補装具費 補装具の購入や修理にかかった費用
車いす、補聴器、装具など
介護保険サービス 介護保険法に基づくサービス
訪問介護、訪問看護、通所リハビリテーション、福祉用具貸与など
障害児支援サービス 児童福祉法に基づく入所・通所サービス
児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所施設など

補足給付:食費、光熱水費などの負担軽減

 食費や光熱水費の負担軽減、グループホームの家賃補助など生活に必要な実費に対する軽減措置があり、これを補足給付といいます。食費や光熱水費の負担軽減は①20歳以上の入所者、②20歳未満の入所者、③通所施設の利用者によって異なります。グループホームの家賃補助は生活保護または低所得者世帯の利用者に対し、1人当たり月額10000円を上限に補足給付が行われます。

●補足給付の種類

20歳以上の入所者の場合 低所得者に対しては自己負担相当額と食費・光熱水費の実費負担をしても、少なくとも手元に25,000円が残るように補足給付が行われる
20歳未満の入所者の場合 地域で子どもを養育する世帯と同程度の負担となるよう補足給付が行われる(所得要件なし)
通所施設利用者の場合 食費について世帯区分が「低所得」や「一般1」の場合、食材料費のみの負担となる

もっと詳しく知りたい方はコチラ!

このページの内容は、二本柳覚編『図解でわかる 障害福祉サービス』の内容を編集したうえで転載しています。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。

編著者:二本柳覚
本のサイズ:B5判変型、226頁
定価:2,200円(税別)