認知症とは?
種類・症状に合わせたかかわり方のポイント
血管性認知症の
原因・症状・かかわり方のポイント
認知症のある人とかかわるうえでは、種類や症状などについての適切な医学知識を理解することが大切です。
この記事では、認知症看護のスペシャリストである石川容子さんに監修いただき、血管性認知症に関する医学知識とそれをふまえたかかわり方のポイントを紹介します。
血管性認知症の基礎知識
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などによる血管障害によって脳細胞が壊れて発症する認知症です。
障害された脳の部位により、認知機能だけではなく、運動麻痺、知覚麻痺、言語障害などの症状をともなうことがあります。
症状は、脳梗塞や脳出血などの発作が再発することによって進行する場合があります。
そのため、発作を防ぐためのケアが必要です。
脳梗塞や脳出血の原因は、生活習慣病によるものが多いとされているため、生活習慣の見直し(塩分や脂質の摂取をひかえめにする、適度な運動をするなど)を心がけましょう。
かかわり方のポイント
血管性認知症のある人に現れる症状は、障害を受けた脳の部位によって異なります。
そのため、ここでは、血管性認知症のある人に寄り添ったケアをするためのポイントを、よくみられる心理面の症状に着目して解説します。
症状に波があることを理解する
血管性認知症のある人は、意欲もなくボーっとして抑うつ状態がみられるときもあれば、意識がはっきりしているときもあります。
抑うつ状態のときに、そうでないときと同じ行動をとることは困難な場合がほとんどです。
そのため、症状に波があることを理解し、そのときの状態に合わせて対応を変えていくことが大切です。
本人の歯痒さをサポートする
細胞が壊れてしまった脳の部位の機能は低下しますが、正常な部位の機能は保たれています。
これにより、できることとできないことの差が大きくなります。
本人は病識があることが多く、思うように動けなかったり、以前はできていたことができなくなったりしていることに対して、歯痒さをかかえています。
そのため、適切なケアを提供できなければ、抑うつ、無気力、幻覚、暴言、暴力などにつながる可能性があります。
当たり前のことですが、本人の困っていること、歯痒く感じていることをサポートすることが大切です。
感情の変化をくみ取った対応をする
血管性認知症のある人は、感情のコントロールが難しく、すぐに泣いたり怒ったりすることがあります。
たとえば、
- ◆ 笑顔で機嫌がよさそうなときに「こんにちは」とあいさつをすると、「うるさい!」と怒鳴る
- ◆ 「お風呂に入りますか?」と聞いただけで、涙をぼろぼろ流して泣いてしまう
というようなことです。
本人もなぜ感情が過度に出てしまうのかわからないのだと思われますが、きっかけになることがあるのかもしれません。
たとえば、心地よく過ごしていたのに急に声をかけられたことで、邪魔をされたような気持ちになっているという可能性も考えられます。
そのため、可能な限り本人の感情の変化をくみ取りながらかかわることが大切です。
* * * *
ここまで、血管性認知症の原因・症状と、それをふまえたかかわり方のポイントを解説しました。
利用者さんの日々の暮らしを支える実践の参考にしていただければ幸いです。
他の認知症の症状・かかわり方についても別記事で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
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※この記事は、「おはよう21」2021年4月号増刊pp.8~23をもとに作成したものです。
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(監修)石川 容子 氏
医療法人社団 翠会 和光病院 看護部長
日本看護協会看護研修学校認知症看護学科修了、認知症看護認定看護師取得。千葉大学大学院看護研究科修士課程修了。 認知症専門病院である、医療法人社団 翠会 和光病院にて、認知症看護のスペシャリストとして活躍。