認知症とは?
種類・症状に合わせたかかわり方のポイント
アルツハイマー型認知症の
原因・症状・かかわり方のポイント
認知症のある人とかかわるうえでは、種類や症状などについての適切な医学知識を理解することが大切です。
この記事では、認知症看護のスペシャリストである石川容子さんに監修いただき、アルツハイマー型認知症に関する医学知識とそれをふまえたかかわり方のポイントを紹介します。
アルツハイマー型認知症の基礎知識
アルツハイマー型認知症とは、異常なたんぱく質が脳の神経細胞にたまることにより、脳の全体が徐々に萎縮する進行性の認知症です。
症状の進行は、発症前期(MCI:軽度認知障害)から、軽度、中等度、重度、末期と緩やかです。
アルツハイマー型認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」があります。
脳の神経細胞が壊れた結果として出現する症状が「中核症状」であり、たいていの人に同じように現れます。
一方で「行動・心理症状(BPSD)」は、環境や人間関係、身体的なことなどが要因となって起こるため、人によって現れ方は異なります。
中核症状、行動・心理症状(BPSD)の例
ここでは、アルツハイマー型認知症の中核症状、行動・心理症状(BPSD)の例を紹介します。
中核症状
中核症状とは、脳神経が壊れることによって直接的に生じる症状のことです。
薬剤で進行を遅らせることはできますが、治すことはできません。
具体的な症状としては、次のようなものがあります。
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行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD)とは、中核症状と環境要因・身体的要因・心理的要因などの相互作用の結果によって生じる症状のことです。
具体的な症状としては、次のようなものがあります。
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これらの症状が現れる原因を推測し、適切なケアを提供できれば、症状を予防・軽減することが可能です。
かかわり方のポイント
ここからは、アルツハイマー型認知症のある人へのかかわり方のポイントとして、常に心がけてほしいことを解説します。
困らないような工夫をする
認知機能が低下していることをふまえ、ちょっとした工夫を日々の暮らしに取り入れると、本人の困りごとを少なくすることができます。
具体的な工夫としては、次のようなものが考えられます。
行動・心理症状(BPSD)そのものを問題視しない
行動・心理症状(BPSD)が生じる背景には何らかの要因があり、適切なケアをすれば、症状を予防・軽減・改善することができます。
目の前で起こっている症状だけにとらわれず、その要因を考えて対応を変えていくことが大切です。
なお、行動・心理症状(BPSD)の要因としては、「環境要因」「身体的要因」「ケア要因」「心理的要因」「薬剤によるもの」などが考えられます。
そして、その背景にあるのは、中核症状による本人の困りごとです。
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どうしようもない不安、焦燥感、つらさなどをくみ取る
認知症のある人が歩き回る行動を「徘徊」と簡単に片づけていないでしょうか。
歩き回るという行動の背景には、それぞれ異なる目的や要因が存在しています。
共通しているのは、楽しそうに歩き回っている人はいないということです。
たとえば、
- ◆ 帰りたいと出口を探してひたすら歩く
- ◆ 自分の居場所がわからずウロウロする
- ◆ 会社に行くと言い「おかしいなぁ、確か駅はこっちなんだけど……」と困惑しながら歩く
というような人が多いと思います。
どうしようもない不安・焦燥感・つらさは本人にしかわかりませんが、本人の話に耳を傾け、少しでも安心して過ごせる環境をつくることが大切です。
どうにもならない症状もあることを理解する
さまざまな要因を考え、どのようなケアをしても、どうにもならない症状もあります。
むしろ、そのほうが多いかもしれません。
たとえば、アルツハイマー型認知症のある人は、不安や恐怖から、大声を出さなければいられないときがあるのかもしれません。
そのような場合には、今以上の苦痛を与えないようにかかわることが大切です。
* * * *
ここまで、アルツハイマー型認知症の原因・症状と、それをふまえたかかわり方のポイントを解説しました。
利用者さんの日々の暮らしを支える実践の参考にしていただければ幸いです。
他の認知症の症状・かかわり方についても別記事で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
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※この記事は、「おはよう21」2021年4月号増刊pp.8~23をもとに作成したものです。
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(監修)石川 容子 氏
医療法人社団 翠会 和光病院 看護部長
日本看護協会看護研修学校認知症看護学科修了、認知症看護認定看護師取得。千葉大学大学院看護研究科修士課程修了。 認知症専門病院である、医療法人社団 翠会 和光病院にて、認知症看護のスペシャリストとして活躍。