子どものストレスへの対処法
子どものストレスへの対処法
【この記事の監修者】
小関俊祐氏(桜美林大学准教授)
公認心理師・臨床心理士
1■子どものストレスサインとは?
子どもは、大人と比べてストレスをうまく表現することが苦手です。そのため、保護者や保育者は、子どもの「ちいさな変化」に気づいてあげることが重要になります。 子どものストレスサインには、身体面、行動面、感情面など、さまざまなものがあります。
身体面 | 食欲の変化(食べる量が急に増える、減る)、睡眠の変化(寝つけない、起きられない)、おねしょやおもらしをする、お腹や頭の痛みを訴える など |
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行動面 | 登園しぶり、好きなものへの興味・関心の低下、反応が乏しくなる、攻撃的になる、友だちと遊ばない、いつもより甘える、しくしく泣く など |
感情面 | イライラしやすくなる、怒りっぽくなる など |
重要なのは、「いつもと違う」という変化に気づくことです。 特に、食事や睡眠など生活面における変化は最初に表れやすいので、保護者と連携して、早めに情報収集を行うようにしましょう。
2■保育園や幼稚園ではどのように対応したらよい?
子どものストレスサインに気づいたら、まずは子どもの気持ちに寄り添い、安心できる環境をつくってあげることが大切です。そのうえで、以下のステップで対応していくとよいでしょう。
比較的落ち着いて過ごせているときや、以前はできていたことを他の保育者や保護者と共有し、子どもにも「できているよ」と伝えていきましょう。
STEP1で共有した「できているとき」と、「できていないとき」について、「状況」「場面」「感情」「身体の状態」といった観点から比較してみましょう。 たとえば、「一人でお絵描きをしているときよりも、友だちと一緒に身体を動かす活動をしているときのほうが、笑顔が見られ、落ち着いている」といった傾向が見えてきます。
STEP2の比較の結果をふまえ、落ち着いて過ごせる時間を増やすために、環境を調整してみましょう。 たとえば、一人で過ごしているときには、保育者がそばで声をかけたり、友だちと一緒に園庭で活動する時間を増やしたりするなどの工夫が考えられます。
3■クラス全体で「ストレス対処法」に取り組んでみよう!
クラス全体で、楽しくストレスへの対処法に取り組むことで、子どもたちのストレスに対処する力を高めることができます。できそうなものを選んで、ぜひ取り組んでみてください。
作戦会議を開こう!
登園しぶり、お友だちとのトラブル、活動中の不安など、子どもたちが共通して抱える問題について、「そんなときはどうしたらいいかな?」とクラス全体で考える「作戦会議」を取り入れてみましょう。複数の解決策を考え、子どもたちが自分で選択できるように促すことがポイントです。「解決策」を部屋の壁などに貼っておくと、子どもたちも選択しやすいかもしれません。
みんなで「ちょいウキ」探し
「ちょいウキ」とは、子どもの気持ちを少しだけウキウキさせてくれるものです。たとえば、「大好きな絵本を読む」「サッカーをする」「折り紙をする」などが挙げられます。ふだんからクラス全体で「ちょいウキ」探しをしていると、登園しぶりのときや、苦手な活動をするとき、落ち込んだ気持ちをなかなか切り替えられないときなどに、子ども自身が「ちょいウキ」を思い出して、元気が出てくることもあります。お友だちが、本人の「ちょいウキ」を知っていると、意図的に誘ってくれることもあるでしょう。
「呼吸法」に挑戦
呼吸に集中することで、心を穏やかにする効果が得られます。「いーち、にーい、さーん」など数字を数えると、どのくらいの長さで呼吸をすればよいのか、子どもたちにもわかりやすくなります。活動の切り替えのときや、クラス全体が落ち着かないときなどに取り入れてみるとよいでしょう。ネコやカメ、木など、動物や植物のポーズをしながら、ゆっくりと呼吸する「マインドフルネスヨーガ」も、子どもたちが楽しく取り組むことができるのでオススメです。
一人ひとりの子どもにとって、保育園や幼稚園が楽しく、安心できる場所であるためには、保育者は子どもたちのストレスサインにアンテナを張り、早めに気づいて対応できることが大切です。
詳しく知りたい方におすすめの本
園内研修に活用できる動画
『子どもと一緒に取り組む 園生活での子どものストレス対処法』(小関俊祐編著、岸野莉奈・小池由香里・杉山智風・土屋さとみ・新川瑶子著、中央法規出版、2024年)に対応した研修用の動画です。【個別の対応編】と【クラス全体への対応編】があります。
園内研修などに、ぜひご活用ください。
クラス全体への対応編