今月のケアマネジャー
介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。
実はあなたも見落としている?
状態悪化を防ぐために欠かせない 口腔・栄養のアセスメント
『ケアマネジャー』2022年12月号から、特集(実はあなたも見落としている? 状態悪化を防ぐために欠かせない 口腔・栄養のアセスメント)の内容を一部ご紹介いたします。
利用者の口腔機能の衰えを見逃すと、オーラルフレイルや低栄養を招くおそれがあります。ケアマネジャーに求められるアセスメントのポイントを整理します。
オーラルフレイルと低栄養の基本を押さえよう!
口腔機能や栄養のアセスメントを行ううえで、外せないのが「オーラルフレイル」と「低栄養」の知識です。まずはその基本を整理しましょう。
口腔機能の4つの役割
口腔機能には、大きく分けると、①呼吸、②食事、③発音(構音)、④表情をつくるという4つの役割があります。いずれも人が生きていくうえで欠かせないものですが、加齢に伴い、徐々に衰えていきます。まずはそれぞれの役割が衰えると、どのような状態を招くのか、整理してみましょう。
①呼吸
――口呼吸が増える
口周りの筋力が低下すると、口呼吸をしやすくなってしまいます。加齢による唾液分泌量の低下と相まって口が渇きやすくなります。また自浄作用が低下し、虫歯等を起こしやすくなります。
②食事
――硬いものを噛めない
歯の減少や噛む筋力の低下によって、肉や魚、野菜といった繊維質の食材を噛むことが難しくなります。すると、筋肉をつくるために必要なたんぱく質が不足するなど、栄養が偏ります。
③発音(構音)
――滑舌が悪くなる
口唇の動きや滑舌が悪くなると、はっきりと発音できなくなったり、声が小さくなったりします。話したことが伝わらず、聞き返されることが増え、他者との会話が億劫になります。
④表情をつくる
――無表情になりやすい
表情をつくる筋肉(口唇や頬など)が衰えると、笑顔をつくりにくくなります。周囲から「無表情で不機嫌そう」と思われるなど、人付き合いに悪影響を及ぼし、孤立の原因となります。
オーラルフレイルと低栄養の基本を押さえよう!
本人も自覚が難しい“オーラルフレイル”
「フレイル」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間のこと。要介護状態に進行する可能性がある一方で、適切な対応によって健康な状態に回復する可能性もある状態です。
オーラルフレイルは、「身体的フレイル」の一つであり、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどがみられる状態です。その症状として、食べこぼし、軽いむせ、硬いものが噛みにくい、滑舌が悪く言葉がはっきりしない、口の中が渇くなどが挙げられます。しかし、些細な症状であるため、本人も自覚しにくく、周囲も見逃してしまうことが少なくありません。
オーラルフレイルは徐々に進行していく
高齢者は、ちょっとした生活の変化をきっかけに、趣味などの活動の機会や外出の回数が減ったり、物忘れが増えてきたりすることがあります。 社会との接点が減ると、口腔への関心も低下し、次のような様子がみられるようになります。
歯が抜けても(歯が痛くても)治療を受けない
入れ歯が合わなくても、そのままにする
すると、口腔内の状態は徐々に悪化し、虫歯や歯周病などの口腔トラブルが起こり、最終的には食べる機能の障害へとつながります。
栄養士が教える 栄養アセスメントのチェックポイント
悪化した栄養状態を改善することは容易ではありません。
そのため、利用者の身体の状態や生活状況を確認し、早期に課題を発見・改善することが必要です。
身体面のアセスメント
☑痩せてきていないか(太ってきていないか)
体重は栄養状態を知るうえで最も参考になる指標です。たとえば、過去6か月以上にわたって体重の減少がみられる場合は、進行性の疾患や食生活による影響が疑われます。また、2週間~ 1か月程度の短期間で体重が減少している場合には、「栄養状態不良」のおそれがあります。
体重の測定が難しい場合は、ベルトの穴の位置が変わった、今まで着ていた洋服が大きく感じられるようになった(あるいは着られなくなった)など、エピソードを通じて体重の変化を把握できるとよいでしょう。
1か月間に5%以上または6か月で10%以上の体重減少があれば、「栄養状態不良」と考えられます。食事量や食事の回数、食事内容の変化、食べる意欲の減退、脱水や下痢、便秘の有無を確認し、栄養士に相談してください。
チェックポイント
>痩せてきている場合――食事摂取量が減った理由とともに、食事内容を確認する
本人が「十分に食べている」と思っていても、菓子パンだけで食事を済ませているケースや、口あたりのよいトマトやヨーグルトだけを食べていることもあります。そのため、食事の内容までしっかりと聞き取ることが重要です。
また、食事量や食べる意欲が低下する背景として、次のようなことも考えられます。これらも確認しておきましょう。
・食事の準備(火器の扱いを含む)や買い物などが難しくなった
・疾患による息切れや息苦しさ、生活習慣や薬による不眠や傾眠傾向がある
・経済的な問題がある
・活動量が低下している
・パーキンソン病などによって飲み込みができない
>太ってきている場合 ――間食や夜食などを含む食生活の状況を確認する
不要な間食や夜食の摂取、不規則な食生活、認知症の影響で食べたことを忘れてしまうなどの理由で、太ってしまう高齢者も少なくありません。特に好きな食べ物が炭水化物(ごはんものや麺類,スナック菓子など)に偏っている人の場合は注意が必要です。
栄養士はこう対応する! ――栄養を補ったり、満足感が上がる食事を提案する
痩せがある場合は、間食を取り入れる、食事に1品足すなど、利用者に応じた栄養を補う方法を検討します。
肥満傾向の場合は、低カロリーの食品やよく噛む必要がある食品を取り入れ、満足感を上げる工夫をします。
執筆:
川口美喜子 大妻女子大学家政学部教授
花形哲夫 花形歯科医院院長
編集協力:
本橋佳子 東京都健康長寿医療センター研究所
以上は、『ケアマネジャー』2022年11月号の特集の内容です。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
Chapter 1
オーラルフレイルと低栄養の基本を押さえよう!
Chapter 2-1
歯科医が教える オーラルフレイルのチェックポイント
Chapter 2-2
歯科医が教える 口腔内アセスメントのチェックポイント
Chapter 3-1
栄養士が教える 栄養アセスメントのチェックポイント
Chapter 3-2
多職種で利用者の“食”と“栄養”を支えるために
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