今月のケアマネジャー
介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。
２大検討会から学ぶ
成果につなげる
事例検討会の進め方
『ケアマネジャー』2025年2月号から、特集（2大検討会から学ぶ成果につなげる事例検討会の進め方）の内容を一部ご紹介いたします。
対人援助職のスキルアップに資する 「事例検討会」として、
「野中式事例検討会」と「気づきの事例検討会」が広く普及しています。
本特集ではこの2大検討会に焦点を当てて、
現場での事例検討会の取り組みに役立つ内容を紹介します。
異なるアプローチで
利用者の福利向上を実現する
事例検討会は、事例を丁寧に振り返ることによって、
対人援助職が直面している課題解決のヒントを生み出し、
利用者の福利（幸せと利益）向上を実現する手法であり、いくつかのやり方があります。
そのなかから、「野中式事例検討会」と「気づきの事例検討会」を比較しながら、
事例検討会の効能と効果に迫ります。
2大検討会のアプローチの違い
野中式事例検討会と気づきの事例検討会では、利用者の福利向上を実現するためのアプローチが違います。
その違いの理由を端的に表現すれば、野中式事例検討会は「ケアカンファレンス」、気づきの事例検討会は「グループスーパービジョン」にその源泉があるからです。
野中式事例検討会が利用者の福利向上を実現するための「手立て（支援のアイデア）」をゴールにするのに対し、気づきの事例検討会は「参加者のスキルアップ」をゴールにします。
野中式事例検討会では、検討会のプロセスで参加者のスキルアップが図れるとし、気づきの事例検討会では、参加者がスキルアップすることで、利用者の福利向上が実現すると考えます。
両検討会を比較する
両検討会とも「利用者の福利向上」と「参加者のスキルアップ」が実現するわけですが、そのアプローチが違うために、さまざまな要件等が異なります（表）。
表 野中式事例検討会と気づきの事例検討会の違い
①検討事例、緊急事例の可否
野中式事例検討会（以下「野中式」）は、事例提供者が直面している課題を解決するために設けられる検討会であり、現在進行形の事例が原則です。事業所内での支援困難事例の解決のための緊急事例の検討にも向いています。
気づきの事例検討会（以下「気づき」）は、緊急事例には不向きです。利用者理解や事例提出者との援助関係などを振り返るための検討会であり、終了事例も積極的に取り上げます。
②形態の多様性
援助の手立てまでを検討する「野中式」は、職場内カンファレンスのほか地域ケア会議など地域課題を検討する場合にも活用することができます。
ケアマネジャーなどの相談援助職のスキルアップを目的とする「気づき」は、学びたいという有志による自主勉強会や相談援助職の研修会などに限定すると成果が高まります。
③参加者、その他
「野中式」は、多面的な「見立て（アセスメント）」と「手立て（支援のアイデア）」を検討していくため、多職種による検討に向いています。
「気づき」は、相談援助におけるアセスメントや援助関係形成のための面接などを振り返っていくため、相談援助職に限定した開催が望まれます。
本人・家族の参加は、「野中式」の場合は、希望すれば可能であり、必要に応じて行政や住民の参加も要請します。
「気づき」は、参加者同士で専門スキルを高め合うことが目的のため、参加者の固定化が望まれ、10人以下の少人数での開催によりスキルアップ効果が高まります。
さらに、事例シートや板書の有無などで両検討会は異なります。
「気づき」が事例提出者による事例シートの記入を必須とするのは、シートの記入がスキルアップにつながるとの考え方によります。
こうした要件等の違いをふまえることで、事例検討会では、よりよい成果が生まれます。次ページ以降、両検討会の進め方の違いを徹底比較していきます。
【執筆】
Chapter1，2：佐賀由彦（ライター）
Chapter3-1：織田卓美（ナイトウ メディックス株式会社 顧問）
Chapter3-2：永沼明美（光が丘訪問看護ステーション居宅介護支援事業所 管理者）
Chapter3-3：鶴本和香（なつめ訪問看護ステーション ケア統括マネージャー）
Chapter3-4：中村匡宏（六浦地域包括支援センター 主任ケアマネジャー）
【編集協力】
岡部正文（社会福祉法人ソラティオ 理事長）
前川嘉彦（社会福祉法人三翠会理事・統括施設長）
特集
Chapter1
異なるアプローチで
利用者の福利向上を実現する
Chapter2-1
利用者へのよりよい支援のために
——野中式事例検討会
Chapter2-2
実践力向上のために
——気づきの事例検討会
Chapter3
現場で実践されている
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