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今月のケアマネジャー

ケアマネジャー

介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。

ケアマネが知っておきたい
生活困窮者支援の制度と連携のコツ

『ケアマネジャー』2024年7月号から、特集(ケアマネが知っておきたい 生活困窮者支援の制度と連携のコツ)の内容を一部ご紹介いたします。

ケアマネジャーが活動するなかで、経済的に困窮した人と出会うことがあります。
今回の特集では、そうした生活困窮の状態にある人を支えるための制度・機関と、ケアマネジャーの連携のあり方について解説します。


生活困窮の実態とセーフティネット

生活困窮者支援のこれまで

 日本では1990年代以降、貧困や不平等・格差が拡大し、生活保護の受給者・世帯は増加傾向にありました。そのなかでも特に2008年の世界的不況(リーマン・ショック)の際には、雇い止めや派遣切りによって失業者が増加し、年末には日比谷公園で「年越し派遣村」が開かれるなど、貧困問題は誰の目にも見えるほど大きくなっていました。
 こうした状況を受け、2013(平成25)年、被保護者数を削減するため、新たに生活困窮者自立支援法が公布されました(2015(平成27)年施行)。
 生活困窮者自立支援法では、第3条において、生活困窮者を「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」と規定しています。この法律の目的は、健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなる(=生活保護受給者となる)ことの防止と、生活困窮が深刻化する前に生活の再建を図ることです。
 すべての生活困窮者が制度の対象者となっているわけではないものの、生活困窮者自立支援法が施行されたことで、生活困窮者の実態がある程度可視化されるようになりました。

データからみる生活困窮者の支援状況

 次に、現在どのくらいの生活困窮者がいるのか、データとともに確認しましょう。
 図1は生活困窮者自立支援制度における支援状況をまとめたものです。 2015(平成27)年度は22.6万件、2019(令和元)年度は24.8万件の新規相談受付があり、この間は20万件台前半で推移していました。また、そのうち自立支援計画(以下、プラン)作成件数は2015
(平成27)年度が5.6万件、2019(令和元)年度で7.9万件と、増加傾向にありました。
 新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、これが急増することになります。新規相談受付件数、プラン作成件数とも大幅に増加し、2020(令和2)年度はそれぞれ78.6万件、13.9万件にまで増加しました。その後、新規相談受付件数は2021(令和3)年度で55.6万件、2022(令和4)年度で35.3万件と、減少傾向にあるものの依然として高い水準になっています。

 また、図2の新規相談者の内訳を見てみると、性別は男性が56.5%、女性が42.4%と男性が多く、年齢層は10代以下が1.3%、20代が11.8%、30代が13.7%、40代が16.0%、50代が17.7%、60代が12.4%、70代以上が14.5%と稼働世代の相談が多くなっています(いずれも令和4年度)。
 さらに、新型コロナウイルス感染症の流行前は、中高年の単身男性をはじめとする高齢者世帯やひとり親世帯からの相談が多くの割合を占めていましたが、流行後は若年単身者、夫婦と子どもの世帯を中心に割合が急増しています。相談内容についても、流行前は「経済的困窮」を理由とするものが最多であり、「その他」「病気」「就職活動困難」「家族関係・家族の問題」などが続いていましたが、感染拡大後は「経済的困窮」が拡大前の3.2倍に増加し最多となっており、ついで「住まい不安定」「就職活動困難」などとなっています。

支援にかかわる多機関・多職種連携

 生活困窮にある人の支援には、さまざまな制度や機関がかかわることになります。
 どの機関・職種がどんな役割を担い、ケアマネジャーとしてどのように連携を図ればよいか、確認しましょう。

自立相談支援機関

生活困窮の課題を広くカバーする

 自立相談支援機関とは、生活困窮者自立支援制度における相談窓口として設置される機関です。
 この制度で定義されている生活困窮者とは、「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」です。
 「維持することができなくなるおそれのある者」という定義はとても幅広くとらえることができ、ケアマネジャーが直面しても介護保険制度の枠組みでは手を付けられない、さまざまな課題をカバーしています。たとえば、次のようなものが当てはまるでしょう。
・家計のやりくりがうまくできない
・親の介護のために就労できない
・長期間家にひきこもっている 等
 個別支援に加え地域住民とのネットワークづくりなど、地域を基盤とした支援も行います。
 自立相談支援機関は、自治体ごとに名称が異なっており、「生活自立サポートセンター」「くらしサポートセンター」「就職・生活支援パーソナルサポートセンター」などさまざまです。まずは自分の地域における名称を確認しておきましょう。
 また、自立相談支援機関に配置されている職種は図5のとおりです。

地域包括支援センターとも連携し、支援ネットワークをつくる

 生活困窮者自立支援制度では「アウトリーチ」と「断らない支援」の2つを重視しています。この点は、ケアマネジャーが抱えている「利用者をどこにつないだらよいのかわからない」というニーズによく合致するでしょう。
 たとえば、「利用者さん亡きあと、ひきこもりで無職の息子さんの将来の生活が心配」という場合、本制度を案内できます。ただ、単に制度を案内しただけでその後うまくつながることは非常にまれです。そこで活用したいのが地域包括支援センターです。
 いったんケアマネジャーから地域包括支援センターへ個別ケースとして相談を行います。地域包括支援センターは相談を受理したあと、自立相談支援機関と連携をとることになるはずです。それによって、このケースについては、ケアマネジャー+2機関の支援ネットワークができることとなります。以降は、基本的にこの2機関におまかせするというスタンスでかまわないでしょう。

その他の解説については、本誌(ケアマネジャー2024年7月号)をご覧ください。
執筆:
Chapter 1
 遠藤康裕 日本女子大学 人間社会学部社会福祉学科 助教
Chapter 2
 小薮基司 社会福祉法人若竹大寿会横浜市すすき野地域ケアプラザ 所長
Chapter 3
 木村直子 よつばケアセンター
 角田辰雄 居宅介護支援事業所ひなたね 管理者
 三輪加子 ケアワーク弥生 管理者
 森本かおり 居宅介護支援事業所ひなたね

以上は、『ケアマネジャー』2024年7月号の特集の内容の一部です。ぜひお手に取ってご覧ください。


特集

Chapter 1
生活困窮の実態とセーフティネット
Chapter 2
支援にかかわる多機関・多職種連携
Chapter 3
事例でみる生活困窮者の支援

『ケアマネジャー 2024年7月号』
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  • けあサポでは今後、中央法規出版発行の月刊誌『おはよう21』『ケアマネジャー』について、最新号のお知らせや、介護現場の皆様に役立つ記事の公開をしてまいります。