今月のケアマネジャー
介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。
ケアマネ基本スキルアップシリーズ(3)
利用者・家族とともに目指す“理想のケアプラン”づくり
『ケアマネジャー』2024年6月号から、特集(ケアマネ基本スキルアップシリーズ(3) 利用者・家族とともに目指す“理想のケアプラン”づくり)の内容を一部ご紹介いたします。
本誌2023年12月号と2024年3月号で、「ニーズ探し」と「アセスメント」について、「利用者とともに行う」ことを主眼に据えて解説しました。
今回もまた、“利用者とともに”を追求して、ケアマネジャーの中核業務であるケアプラン作成を取り上げます。
理想のケアプランづくりについて考えていきましょう。
スキルアップ集中プログラムNo.1
目指したいのはこんなケアプラン
利用者と一緒にどのようなケアプランをつくればよいのでしょうか。
3つの理想的なケアプランを、まずはイメージしたいと思います。
理想イメージ 01
「世界に一つだけの」ケアプラン
たとえば、カルタ取りのように、さまざまなケアプランが目の前に並べられていたとします。利用者の氏名は隠されています。そんな場面を想定してみましょう。
果たして利用者は「私のケアプランはこれ! 」と選ぶことができるでしょうか?
それを可能にするためには、ケアプランのなかに、利用者自身の言葉や利用者とケアマネジャーが一緒に考えた内容が散りばめられていることが極めて重要です。
そんな、利用者が自分のものだと一目でわかるケアプランであることが理想です。
世界に一つだけの自分のためにつくられたケアプランであることが一目瞭然であれば、利用者は間違いなく自分のケアプランを選び取ることができます。
今回の特集では、どうすれば唯一無二のケアプランにすることができるのかについて、具体的な方法を考えていきたいと思います。
理想イメージ 02
「何度も読みたくなる」ケアプラン
ケアマネジャーは、利用者にケアプランを手渡します。受け取った利用者は、そのケアプランをどのように取り扱うでしょうか?
利用者と一緒に練り上げたケアプランであるほど、その価値は高まります。自分が納得できるまで何度も書き直しをしてもらった後に、手渡されたケアプランを額縁に入れて、自分の居室に飾ったという利用者がいたといいます。それほどまでに、ケアプランは宝物となり得るのです。理想的なケアプランは、利用者をそんな気持ちにさせてくれます。
ケアプランは、ケアマネジャーから利用者に贈る心を込めたメッセージでもあります。
そのメッセージに納得し、ケアプランに書かれた「計画」を実行することで、利用者は希望への道を歩むことができます。
利用者が亡くなった後、残された家族がケアプランを読み返し、「介護は大変だったけど、こんなこともあったよねえ」と思い出話に花を咲かせたというエピソードがありました。
本特集では、利用者や家族が何度でも読みたくなるようなケアプランをどのようにすれば作成できるのかを紹介していきます。
理想イメージ 03
「周囲の理解が深まる」ケアプラン
ケアプランを読んだだけで、利用者像が目に浮かぶでしょうか?
ケアプラン点検に来た県の担当者に、「この利用者さんがどんな人かよくわかります」と言われたケアマネジャーがいました。
たとえ、利用者に会ったことのない人であっても、ケアプランを見れば、利用者がどんな人か想像できる。家族やサービス担当者など、利用者を知る人には、利用者像の再発見ができる。それが理想的なケアプランです。
サービス担当者は、サービス内容の根拠をケアプランで知ることができます。根拠とは、どんな目的でどのようなサービスを提供するのかというよりどころです。サービス担当者が変わっても、ケアプランがあれば、サービスの根拠を知ることができます。
家族もまた、本人が自分たちに向ける思いを汲み取ることができ、また、どのような気持ちでこれからの生活を組み立てようとしているのかを理解することができます。
このように、ケアプランは、利用者本人と本人を取り巻く周囲の人たちを取り結ぶ有能なコミュニケーションツールとなることができます。
この特集では、そのための具体的な方法を提示していきます。
スキルアップ集中プログラムNo.3
ケアプラン作成実践編
ここからは作成の実践編です。
生活の主体者である利用者の息遣いが聞こえてくるようなケアプランを作成していきましょう。
第1表 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
意向を直筆で書いてもらう方法も
ケアプランは、利用者と家族の生活に対する意向から始まります。この意向は、ケアマネジャーのフィルターを通さずに書くことが大切です。それを可能にするとっておきの方法があります。
ケアプランは、パソコン入力をすると決められているわけではありません。ケアマネジャーの作文にしないための最も効果的な方法は、利用者自身に自分の思いを書いてもらうことです。第1表をA3判の大きさに拡大するなどして、書くことができる人には直筆をお願いするのです。
予告してお願いする
もちろん、初回面接などでいきなり書いてくださいと言われても、戸惑うばかりでしょう。ケアプランは、利用者と一緒につくり上げるものであること、ケアプランに盛り込まれる自分たちの支援は、本人の思いを可能な限り最優先にすることを十分に説明したうえで、「次回の訪問までに書くことを考えておいてください」と依頼します。
一緒の船に乗り合わせたケアチームのメンバーは、船長である利用者の思いを知らなければ、どこに向かったらよいのかわからないことを十分に説明し、納得してもらいましょう。
同時に、気持ちが変わったら、いつでも書き直してよいことも伝え、プレッシャーを軽くする配慮も必要です。
前述したように、ケアチームと一緒に進む航海の行き先をリーダーに示してもらい、それに基づいて航路を一緒に考えるという構図です。事情が変われば、行き先を変更することも当然ですし、風向きしだいで航路を変えることもあり得ます。
〇直筆の説得力
利用者の直筆を見たある家族は、「お父さん、書けるんだ」と目を丸くしました。
「久し振りにお母さんの字を見た」と感激した家族もいました。
もの忘れが多くなった利用者は、自分の筆跡を確かめ、「たしかにこれは自分が書いたものだ」と話しました。「親父がそんなことを言うわけがない」と繰り返していた家族は、「こんなことを思っていたのか」とつぶやきました。
これらはすべて、直筆がなせることと言えるでしょう。
家族にも直筆を
直筆がもつ説得力は、家族の意向にも当てはまります。
家族の直筆を見たある利用者は、家族が寄せる自分への思いに目を潤ませました。
その家族は、利用者と接するときは、いつもきつい言葉を発する人でした。ケアマネジャーもその場面を何度も目撃したことがありました。しかし、その言葉の裏には、利用者に寄せる熱い思いがあったのです。
書くことの魅力
気持ちと裏腹の言葉が出てしまった経験は誰にもあるかと思います。照れくさくて、人に言えないこともあるでしょう。人の心には、さまざまな感情が渦巻いています。自分では気づかない気持ちもあるでしょう。心にもないことを言ってしまったり、「なぜあんなことを言ってしまったのだろう」と後悔することもあります。売り言葉に買い言葉で、暴言の応酬になることもあります。
親しい人、そうでない人、反目している人、利害関係者、それ以外の人、目上の人、年下の人など、対面する人によって言葉を使い分けることも普通です。ケアマネジャーとヘルパーに言うことが違っていたり、家族にだけ話せることもあれば、家族には話せないけれど他人には話せるといったこともあります。
冷静になって、自分の心に向き合い、それを文章にすることで、自分の本当の思いを表現することができるのです。それが、書くことの魅力です。
ケアプランはフォーマルな書類
ケアプランはフォーマルな書類です。言葉は消え去りますが、書いた物は記録として残り、場合によっては「証拠」にもなります。利用者によっては、そのことを伝えてもよいでしょう。適度な緊張感のもとに、嘘偽りのない思いが表現される可能性が高まります。
〇家族を変えたエピソード
入院をとても嫌がる男性の利用者がいました。病院の制止を振り切り、治療が終わらないうちに退院してしまうこともしばしばでした。妻は、もう介護は難しい、できるだけ長く入院していてほしいと思うようにもなっていました。
入院中のある日、ケアマネジャーは、本人の意向の欄に「今の気持ちを書いておいてほしい」と頼み、A3判に拡大した第1表を男性に手渡しました。
後日、受け取った第1表には、家に早く帰りたい気持ちが綴られていました。
「妻が毎朝淹れてくれるコーヒーの香りを嗅ぎながら、手作りの朝食を食べるのは、私の至福の時間です。妻もきっと寂しい思いをしているのではないでしょうか」
それを見た妻は、早く帰って来てほしいと思うようになりました。
ライター
編集協力:相田里香
介護サービス青い鳥 代表
以上は、『ケアマネジャー』2024年6月号の特集の内容の一部です。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
スキルアップ集中プログラム No.1
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スキルアップ集中プログラム No.2
「羅針盤」と説明しよう
スキルアップ集中プログラム No.3
ケアプラン作成実践編
スキルアップ集中プログラム No.4
記入例で考える 読みたくなるケアプラン
スキルアップ集中プログラム No.5
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