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今月のケアマネジャー

ケアマネジャー

介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。

思いを尊重し、最期のときを支える
ACP実践事例に学ぶ意思決定支援

『ケアマネジャー』2024年1月号から、特集(思いを尊重し、最期のときを支える ACP実践事例に学ぶ意思決定支援)の内容を一部ご紹介いたします。

 どこで最期を迎えたいか、誰に最期を看取ってもらいたいか。
 「その人らしい最期」を実現するために、ケアマネジャーには意思決定支援の取り組みが求められます。
 ケアマネジャーとして人生の最終段階へ望む人をどう支えるか、理論と実践から学びましょう。


ACP実践事例からみる意思決定支援のポイント

 現場のケアマネジャーが出会うケースの状況や事情はさまざまです。
 どのように利用者や家族にかかわっていくか、実践事例を通して学びましょう。

実践事例FILE #1
本人が決めたACPをケアチームがそのつど確認し、本人の意思決定とそれを尊重する家族の支援を行ったケース

基本情報

Aさん(72歳、男性)
要介護度:2→3
家族構成:妻と2人暮らし、隣家に長女家族

事例の経過

 Aさんは長年医師として働いてきたが、多系統萎縮症を患い、要介護2と認定がされた。担当ケアマネジャー(以下、CM)は本人の父母、および義母の担当であったことから、すでに信頼関係はできていた❶
 訪問診療の初回面談にて、本人は「胃ろうはしない、気管切開もしない」という意向を伝え、妻も同意していた❷。妻の体力面の問題から、在宅介護が困難になったときは夫妻で有料老人ホームへ入所することも同意された。
 その後症状は進行していき、半年後には要介護3となった。嚥下機能が低下し、栄養が足りていないことから、胃ろうに対する意思確認を行った。胃ろうを造設しなければ体力が落ち、状態が悪化していくことを伝えたうえで、再度「胃ろうはしない、気管切開もしない」と本人と妻、訪問診療医、担当CMで意向を確認した。
 さらに半年後、誤嚥性肺炎で緊急搬送され、入院先のD病院で胃ろうの造設と気管切開の提案がされた。本人は発語困難な状態だったものの、医師の説明に頷かなかった。コロナ禍で家族の面会は制限されていたが、特別対応として家族が本人の意思確認を行うことになった❸
 その後、妻から「胃ろうも気管切開も拒否。Cクリニックに転院したいかと聞いたら、頷いた」と連絡が入った。転院後、Cクリニックの院長は本人にVE検査(内視鏡で嚥下機能を観察する検査)の映像を見せながら、嚥下ができない状態であることを説明した❹。院長から「本人は末梢点滴もせず自宅に戻ることを望んでいるが、一方で妻の夜間の負担が心配で悩んでいる」との連絡を受け、吸引ができる泊まり込みヘルパーを妻に紹介した。
 10日後、自宅にて看取りを行った。

ケアマネジャーとしてのかかわり

  • ❶ 本人は医師であり、医学的知識や判断能力はあるため、予後の見通しなど伝えにくいことも包み隠さず伝え、本人の自己決定により援助方針を決めることにしました。
  • ❷ ACPの際には、訪問診療医、妻、近所に住む長女のほか、遠方在住の次女にもテレビ電話を利用して立ち会ってもらいました。
  • ❸ 担当CMは緊急入院になる可能性を予測して、あらかじめケアチームであった有床診療所のCクリニックの院長に相談し、「今までケアチームとしてかかわってきた医師の説明で方針決定を行ったほうがよいと思うので、当院への転院を提案してもらってかまいません。当院はそのためにあります」という言葉をもらっていました。
  •  それをふまえて、妻には本人が胃ろうを拒否した場合にはCクリニックへの転院を提案することを助言し、また妻が一人で責任を背負い込まないよう、家族を含めた複数で意思確認をすることを勧めました。
  • ❹ 看取り後、院長に「よく本人にVE検査の映像をお見せになりましたね」と伝えると、「私も医師である人には包み隠さず、すべてを伝えたうえで自己決定をしていただくしかないと考えていました」と話されました。

意思決定を支えるポイント

 本事例では、本人は医師として多くの患者を見てきた経験などをふまえて、一貫して「胃ろうと気管切開はしない」と意思表明していました。一方、栄養不足でやせていく姿を見て、妻は胃ろうの造設を希望していました。
 あらかじめ意向を確認してあっても、実際に容態が変化したりすると本人や家族の意向が変化することは多々あります。意向はその場面ごとに変化してもよいものであり、意向を変えることも、変えずに貫くことも、どちらも尊重されるべき自己決定の形です。
 ケアマネジャーとしては、利用者や家族が抱える葛藤に寄り添いながら、最後には本人の意思を尊重する姿勢が大切です。

解説および他の実践事例については、本誌(ケアマネジャー2024年2月号)をご覧ください。
執筆:
Chapter 1
片山陽子

香川県立保健医療大学保健医療学部教授
Chapter 2
相田里香

介護サービス青い鳥代表
Chapter 3
永沼明美

光が丘訪問介護ステーション居宅介護支援事業所管理者
藤井江美
品川区介護支援専門員連絡協議会副会長
松本千恵
芦屋中央病院指定居宅介護支援事業所管理者

以上は、『ケアマネジャー』2024年2月号の特集の内容の一部です。ぜひお手に取ってご覧ください。


特集

Chapter1
人生の最終段階にある人のケア ~エンド・オブ・ライフケアとは~
Chapter2
意思決定を支えるケアマネジャーの役割
Chapter3
ACP 実践事例からみる意思決定支援のポイント

『ケアマネジャー 2024年2月号』
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  • けあサポでは今後、中央法規出版発行の月刊誌『おはよう21』『ケアマネジャー』について、最新号のお知らせや、介護現場の皆様に役立つ記事の公開をしてまいります。