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がんについて

抗がん剤による味覚障害への対処法

抗がん剤の副作用のひとつに、味覚障害があります。

味覚障害は、すぐに命にかかわる異常ではありません。
しかし、食事を楽しめなくなることによる「生きがいの低下」や、食欲不振による「体力の低下」「栄養障害」を招く場合があり、軽視できない問題です。

そこで本記事では、抗がん剤による味覚障害への対処法について解説します。

【監修】

撮影:幡野広志

西 智弘 先生

川崎市立井田病院 腫瘍内科 部長
一般社団法人プラスケア代表理事

目次

治療可能な味覚障害

「味がおかしくて食べる気がしない」
「まるで砂を噛んでいるかのようだ」……
そんな味覚障害の訴えがあったとき、最初にするべきことは、「口の中の観察」です。

口腔内に明らかな異常が認められる場合には、適切な治療をすることで元の味覚を取り戻せることがあります。

よく見られる口腔内の異常としては、

  • ・口腔内の常在菌であるカンジダ菌(カビの一種)が増殖し、口の中を覆っている
  • ・粘膜炎(口内炎)ができている
  • ・粘膜炎(口内炎)の痛みなどにより、口腔内の清潔を保てていない

などが挙げられます。

これらに該当する場合には、歯科口腔外科の専門家に相談してみましょう

調理や味つけの工夫による味覚障害への対処法

口腔内に明らかな異常がない場合には、純粋な味覚障害としてケアの方法を模索していくこととなります。

ただ、味覚障害と一口に言っても、「塩味だけダメ」「甘味を強く感じすぎる」など、人によって症状は異なります。
ここでは、「比較的頻度が高い味覚障害のパターン」をもとに、調理や味つけなどの工夫をご紹介します。

  • ・塩味や甘味は、感度が低下または増強される頻度が高い一方で、酸味などは感じやすいことが多い。
    酢の物や発酵食品などは食べられることがある
  • ・醤油味がダメになる(苦みを強く感じてしまう)ことがある。
    ⇒和食は全般的に食べにくくなる一方で、洋食(特にマヨネーズやケチャップを使用した
     料理)は食べやすいことが多い
  • ・嗅覚に問題がない場合には、出汁の味(風味)を感じられることがある。昆布や煮干し、シイタケなど複数の出汁を重ねると、より風味を感じやすくなることがある。

可能であれば、一度栄養士に相談してみましょう
どのような調理法や味つけが食べやすいのかについて、最もよい選択肢を一緒に考え、提案してくれます。

また、味覚障害と直接的な関係はありませんが、抗がん剤治療中の食事にまつわる工夫もお伝えしますので、参考にしてみてください。

  • ・大皿料理をいくつも並べるよりも、小分けにして出すことで、心理的に食べやすくなる場合がある。
  • ・おかずを何種類も出すよりも、丼にしたほうが食べやすい場合がある(いくつもの皿から選んで食べることは精神的負担と疲弊が大きくなる)。
  • ・朝昼晩と定期的にお腹がすかないので、食べられそうなときに食べられるものを常備しておくとよい(バナナやヨーグルト、ゼリーなどは重宝する)。
  • ・仮に食事ができなくても、歯磨きや口腔ケアは毎日行う。

毎日の食事を少しでも楽しんでもらえるよう、無理のないように少しずつ試してみてください。

もっと深く学びたい方には、コチラの本がおすすめ!

『がんになった人のそばで、わたしたちにできること』

(著)西智弘
(発行)中央法規出版

「がんになるとはどういうことか」「がんによる生活への影響はどのようなものか」「がんで死ぬのは幸せなのか」……。抗がん剤治療から緩和ケア病棟でのケア、また在宅診療まで幅広く、数え切れないほどのがん患者さんに接してきた著者が、がんという病気についてやさしくレクチャーします。