山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
-
介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
北風と太陽(冷たい言葉と温かいココア)
厚労省の発表によると、令和3年度に起きた(通報があった)介護施設の職員などによる高齢者への虐待件数は739件で、前年度から144件増え、過去最多になったということです。また、相談・通報の件数も、これまでで最も多い2390件となりました。厚労省は、対策として、令和6年度から、施設での職員研修や対策会議の設置などを義務化しますが、「虐待をなくすこと」が目的になることのないようにしたいと思います。「福祉」という言葉は、“福”も“祉”も、「幸せ」という意味があると何かで読んだことがあります。「福祉」が人を幸せにするものなら、福祉を職業にしたわたしたちのミッションは、虐待をなくすことではなく「人を幸せにすること」ですよね。
夜勤では、多くのご利用者を職員一人でみることになります。なかには、認知症もあって夜に眠れないご利用者もいます。職員も人間です。内心では、「寝てほしい…」と思うのは仕方がありません。ただ、その表現が「もう夜なので寝てください!」と強い口調になってしまう職員がいます。ご利用者が起きてくるたびに、「どうしたんですか!?」「トイレ? さっきも行ったばっかりですよ!」「帰る? もう夜中ですから、明日にしてください!」と、だんだんイライラしてきてしまうんですよね。わからなくはないのですが…。
私が夜勤をしていた頃、職員からよく「山口さんが夜勤の日は、みんな良眠のことが多いですよね」と言われていました。なにか秘技があるわけではありません。常にご利用者に安心していただくことを意識していました。
ご利用者からわりと人気者だった私は、「今日、山ちゃん夜勤なの! うれしい!」とよく言われ、「寂しかったら、いつでも呼んでね」なんて答えていました。夜に「眠れない」と言って起きてくるご利用者には、「僕も眠れないの。一緒にあったかいものでも飲もうか」と言って、ふたりで温かいココアを飲んだりもしました。
一概には言えませんが、眠れない背景には、人や環境に対する不安もある気がします。だから、「安心してくださいね」という接し方を心がけていました。「あんた、やさしいねぇ」と言われるとうれしかったですし…(笑)。
「寝てほしい」という気持ちは、私も一緒でした。その表現として、「寝てください!」が逆効果だということを知っていただけです。
強い口調、乱暴な言葉は、人を不快にさせ、不安にさせます。それが常態化することで、虐待に発展しかねません。虐待は受けた側は悲劇ですが、してしまった側も取り返しのつかない代償を払うことになります。負の感情は、スパイラルを起こします。人には愛情をもって接しましょう。
冷たい言葉よりも、温かいココアのほうが、みんなうれしいですよね。
著書のご案内
-
山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8