山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
介護職の明日はどっちだ
ご利用者の救急搬送に同乗していった職員。病院で一連の検査が終わった後、医師から厳しい状態であることを聞きました。すでに夜遅い時間になっていました。彼は施設で待っている私のところへ電話をしてきて、「施設長、つらいですね…。状態が悪いって言われたんですけど、〇〇さん、僕が声をかけると笑ってくれるんです。手を握ると落ち着いてくれるんですよ。そんなに悪いなんて思えなくて…。本当につらいですね」と泣いていました。
彼との電話を切った後、私は、生活相談員になったばかりの頃…、17年くらい前のことを思い出しました。
認知症があり、在宅での介護が困難となって、施設入居された女性Mさん。入居当初は、環境の変化に混乱していましたが、職員たちの温かいかかわりにより、入居当初の状態がうそのように、穏やかに生活されていました。その方が体調を崩してしまい、入院することになりました。救急車に同乗したのが、当時、生活相談員だった私です。病院に到着すると、採血、採尿、心電図など、次々検査が続き、Mさんは不安から、看護師さんに激しく抵抗し、その結果、ベッドにベルトで縛られ、拘束されてしまいました。その姿を見た私は、悲しくて、申し訳なくて、Mさんに抱きついて大泣きしてしまいました。
そんな姿を見ていた看護師長さんが、看護師の方に、「本当に拘束が必要かどうか、もう一度、よくお話を聞きなさい」と指示をしてくださり、その結果、拘束を外してくれました。看護師長さんは、私の頭をなでなでして、にっこり笑って、部屋を出て行かれました。
22年間、この仕事を続けてきて、多くのご利用者と出会いました。ご利用者を通して、多くの方に出会いました。その一つひとつの出会いが、一つひとつの経験が、いまの私をつくってくれたと思っています。
今回、救急搬送されたご利用者の回復を信じています。また、救急車に同乗し、医師から厳しい現実を突きつけられた職員の成長も信じています。
介護現場のICT化により、職員の配置基準を見直す検討がされています。人口動態から考えても、いつかは見直しが必要になってくるのかもしれません。ただ、人を介護する職員というのは、何人配置されているのが適当か、という議論だけでよいのでしょうか。
私には、ご利用者が苦しいときに、寄り添ってくれる職員、ときには涙を流してくれるほど想いをもっている職員の育成こそ、議論が急務のように思います。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8