山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
ありふれた幸せはどこに消えたのか?
高齢者施設、障害者施設における虐待事件の報道が続きました。
90歳代男性入居者の頭部にポリ袋をかぶせた介護職員。90歳代女性入居者の頭部などに暴行を加え、殺害した介護職員。胸と腕の骨が折れていて、顔から胸にかけて熱湯をかけられた痕もあったそうです。
知的障害者入所施設では、入所者の肛門に金属製のナットが入っていた、スクワットを数百回させた、などの報道がありました。県の調査委員会の調べによると、この施設では2015年度以降だけでも41件。76人の職員が虐待に関与していた疑いがあるそうです。
介護現場の職員を擁護する声もあります。慢性的な人材不足、劣悪な職場環境、低賃金、重労働…。どれも当たっているのかもしれません。ただ、それが人を傷つけてもよい、という理由にはなりません。
過激な言い方かもしれませんが、嫌なら辞めればいい。えり好みしなければ、ほかにも仕事はあるはずです。
こんなことになってしまえば、亡くなった人は帰って来ないし、虐待、殺害した職員の人生も取り返しがつきません。
他人の人生も、自分の人生も、大事にしてください。
親は、あなたが生まれたとき、幸せを感じたはずです。あなたに幸せになってほしいと心から願ったはずです。
ご利用者も同じです。その方が生まれたとき、親は幸せを感じ、その子の幸せを願ったのです。
虐待は、親の願いを裏切り、踏みにじったことになります。虐待をされた人はもちろん、した人も不幸です。虐待をした人は、親不孝です。他人様の親を傷付け、子を傷付け、親が知ったら、どれだけ悲しむか。
これまでの人生を振り返ってみてください。
子どもの頃、親に抱かれたこと、手をつないで歩いたこと、褒められて頭をなでられたこと、いたずらして怒られたこと。友だちと遊んだこと。喧嘩したこと。学校の勉強や受験に苦しんだこと。恋人ができて勉強が手につかなかったこと。社会に出て、失敗したり、上司に怒られたり、悔しかったこと。仲間と一緒にお酒を飲んで楽しかったこと。
自分の人生を大事にしてください。ご利用者にも同じように人生があることを忘れないでください。
職員もご利用者も、一人ひとりが尊い存在なのです。誰かの大事な人。愛する人なのです。
愛されることの喜び。人を想うことの喜び。困っている人がいたら声をかけ、自分が困っているときに声をかけられ、手を差し伸べられた手の温かさを忘れない。
そんなどこにでもあったはずの幸せ。ありふれた幸せをどこに置いてきてしまったのでしょうか。
私たちの仕事は、人を傷つけることじゃない。
傷ついた心を癒すことです。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8