山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
傷だらけの栄光
「もう疲れたな…」
誰もいなくなった夜の事務所で、遅い時間の誰ともすれ違わない帰り道で、気がつくとぼそっとため息交じりにそう呟いていることがあります。
普段の元気はうそじゃない。無理をしているわけでもない。ただ、一人になると電池が切れた機械のように、身体も思考も停止してしまったようになるときがあります。
先日、職員から手紙を渡されました。
「急にどうしたの?」と私が尋ねると、「いえ、なんでもないです。時間があったら読んでください」と彼は答えました。
「恋文か?」「そうです(笑)」
そう言って、夜勤明けの彼は施設を出ました。
その日の午後、少し一人になれる時間があったので、部屋の扉を閉め、彼にもらった手紙を開きました。
彼が他施設から転職してから3年半。手紙には、この3年半の感謝の気持ちが綴られていました。「辞めるのかな?」読みながらそう思ったほど、彼はこれまでの時間を振り返っていました。
思い返せば、彼が勤めはじめてから、いろいろありました。
退職の相談を受けたことも一度や二度じゃありません。
「退職願を目の前でびりびりに破いてくれて…」
そんなこともあったね(笑)
彼は前職場で…、これまでの人生で…、たくさん辛い経験をしてきました。
辛いこと、悲しいことを乗り越えると、その経験は強さとなり、優しさとなります。だって、誰よりも他人の辛いこと、悲しいことがわかるのだから。
手紙の後半には、
「施設長は人を信頼して悪く思わず、その人が成長し変わっていくことを信じて待つ人」
「職員の待遇が良いこと、施設が今まで以上に快適な空間になっていること、それは施設長が見えないところで頑張ってくれているからなのだと思います」
「職員や入居者のために頭を悩ませていても、笑顔で毎日働いていること、本当にすごい人だと実感します。ただ、どうかお身体を大事にしてください。無理をし過ぎずに…」と、温かい労いの言葉がぎっしりと…。
不覚にも涙が止まらなくなりました。
管理者は孤独です。誰にも言えないことばかりだし、他人には何をしているか見えないから、理解されないこと、誤解されることも少なくありません。
ただ、彼のように、人の気持ちを憂いて、理解しようとしてくれる人もいます。
ありがとう。
どんなに辛くても、明日はやってくる。
どんなに悩んでも、腹は減るし、よく眠る。
そうやって生きていきましょう。
いつかきっといいことがあるから。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8