山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
人生という名のマラソン
22年間、介護・福祉の仕事を続けてきましたが、「昔から、特養に入居するのが夢でした」という方には、一度もお会いしたことがありません。
先日、私の勤務する施設がある地域で、地域住民向けに「特養ってどんなところ?」という勉強会が開かれ、講師としてお招きいただきました。
勉強会の冒頭、「将来は特養に入るつもりという方はいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、一人も手を挙げてくれませんでした(泣)
やはり特養に対するイメージは明るいものではないようです。
でも、勉強会終了後、参加者のみなさんから「特養のイメージが完全に変わったわ」「申し込んでもすぐには入れないんでしょう?」という意見をいただき、知っていただくことがいかに大事であるかを感じました。
今まで多くの入居者の方を受け入れてきました。入居当初は、「家に帰る! こんなところにいられない!」とおっしゃる方も少なくありません。それはある意味で当たり前です。多床室であれば、隣には知らない高齢者の方がいて、会ったこともない職員から排泄のお世話をされ、お風呂では裸まで見られる…。とても幸せな生活とは思えないかもしれません。しかし、一日、二日、三日…と、日々の積み重ねにより、入居者同士の関係、特に職員との関係が築かれていき、いつしか笑顔が増え、穏やかな表情になっていきます。
ご家族が家に連れて帰ることがあっても、数時間で戻って来られ、「家に帰ったら母が、帰る、帰るって聞かないので、早めに戻ってきました」と息子さんが複雑な表情をされていることもありました。ご利用者の方が「帰る」と言っている場所は、「自分の居場所」があるところなのかもしれません。
苦労して生きてこられた人生。いつか迎える老後。そのとき、私たちの目の前には、どのような景色が見えるのでしょう。
願わくば、「長生きした甲斐があった」と思っていただけるゴールが待っていてほしい。
人生はマラソンのようだと、私は思います。
前に進むだけで、立ち止まれば棄権となり、下がれば失格となる。
こんな厳しい社会という42.195㎞を走り切った人たちに、幸せなゴールが待っていることを願います。そして、そのゴールが幸せであるかどうかは、私たち介護・福祉職にかかっている気がします。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8