山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
-
介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「お誕生日には花を添えて」
誰にでも年に一度、公平にやってくるもの。それは誕生日です。
365日、世界中に多くの命が誕生しています。そして、多くの命が亡くなってもいます。
小説家マーク・トウェインの言葉に、
「人生には最も大切な日が二日ある。生まれた日と、生まれた理由が分かった日だ」
というものがあります。
生まれた命には理由がある。人はみな、何かをするために生まれてきたということでしょうか。
だとしたら、戦争で失われてよい命などあるはずがありません。一人ひとりが何かをするために生まれてきたのに…。無限の可能性をもって生まれてきたのに…。その尊い命を奪うことに大義などあるはずがないのです。
77年前に戦争を終えた人たちが、私たちの目の前にいるご利用者です。
十年ほど前、私は男性ご利用者から「俺はこんな世の中にするために、命がけで戦争に行ったんじゃねえ!」という言葉を聞きました。
いま毎日テレビで報道されるウクライナ情勢を見て、ご利用者は何を思っているでしょうか。
かつての戦争で、子を失ったご利用者の「私は戦争に行かせるためにお腹を痛めて息子を産んだのではありません」と言った言葉が胸に刺さりました。一人ひとりに産んでくれた親がいる。子の幸せを願った親がいるのです。
そして、愛する家族がいます。
男性ご利用者Sさんには、愛する奥様がいました。コロナ前だったこともあって、奥様は毎日のようにSさんの面会にいらしてました。とっても仲のいいご夫婦でした。
Sさんの担当職員H君は、Sさんの奥様のお誕生日の前に、「Sさん、奥様のお誕生日にお手紙を書きませんか?」と尋ね、Sさんも了承しました。
Sさんが想いを話し、H君が代筆したその手紙は、Sさんの奥様に対する感謝と愛情にあふれていて、とっても感動的な内容でした。
お手紙の最後に、「僕の人生に出会ってくれて、ありがとう」と書かれていました。
高齢になり、介護を要するご利用者の方たちは、会いたくても、想いを伝えたくても、一人では叶えられないこともあります。そのお手伝いができるのも、私たち介護職という仕事の醍醐味ではないでしょうか。
いつか私たちも歳をとります。会いたい人、想いを伝えたい人に会うことも、想いを伝えることもできず、人生を終えることを想像してみてください。
ご利用者からの「ありがとう」という言葉がやりがいだと言う介護職は少なくありません。
食事、排泄、入浴の介助をしたことへの「ありがとう」だけではなく、心からの「ありがとう」を…。
私たちの身近にも、「私の人生に出会ってくれて、ありがとう」と伝えたいと思っている人がいるかもしれません。
著書のご案内
-
山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8