山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「いつかキラキラする日」
四月に入職した新卒の職員に初任給が出ました。
「お父さんとお母さん、お婆ちゃんと妹にお小遣いをあげました」と得意げに報告にきました。社会人になってはじめて自分で働いて得たお給料です。嬉しかったでしょう。
でもきっと、お父さん、お母さんは、もっと嬉しかったのではないかと思います。
生まれたときからのことを振り返り、わが子が社会人になって、自分たちにお小遣いをくれるようになる。
子育て中には、きっとさまざまな心配、苦労があったことでしょう。赤ちゃんが生まれたときに0歳であるように、親も親になった瞬間は0歳です。どうしたらいいか分からず、悩み、葛藤しながら、ときには笑ったり、ときにはイライラしたり、泣いたことも一度や二度じゃなかったかもしれません。ここまで育ててきたご両親の苦労を想うと、はじめて勤める会社の管理者として、責任をもってバトンを受け取らなければと襟を正す気持ちです。
福祉職として思うのは、私たちの目の前にいるご利用者一人ひとりが、誰かの大切な子どもだったということ、誰かが泣いたり笑ったり葛藤したりしながら育てた大切な子どもだったということです。
やがて大人になり、働き、出会いや別れを繰り返しながら、歳を重ねていったのです。
人はみんな違うけれど、人はみんな誰かの愛する子です。傷つけてはいけません。ぞんざいに扱っていい人なんていません。
高齢になり、人の手助けや介護が必要になることも、みんないつか行く道です。
「子供しかるな、来た道だもの。年寄り笑うな、ゆく道だもの」(永六輔『大往生』p36、岩波書店、1994年)という言葉があります。
ご利用者の人生に思いを馳せる人でありたい。一人ひとりにご両親がいて、子の幸せを願っていたことを忘れないでほしい。
介護が「業務」にならないように。私たちのしている仕事は、もっともっと尊いものです。
高齢になったら、昨日が今日でも今日が明日でも変わらない毎日でいいのでしょうか。
もう一度、キラキラした日々を。
いつかその日がきたとき、「幸せな人生だった」と目を閉じてくれるように。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8