山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
心の傷
私の勤務する特養の1フロアで起きた新型コロナウィルスクラスターは、発生から一か月をもって収束しました。
次々と感染が拡大するなか、ご利用者の命を守るため必死でした。救急車を呼んでも、受け入れてくれる病院が見つからない。これまでも、2時間くらい病院が見つからないことはありましたが、7時間、8時間経っても見つからないということは経験がありませんでした。
怖かった。目の前に苦しむ人がいるのに、医療につなげない。基本的に治療ができない施設のなかで、大勢の方の命を自分たちが守っていく。そして、守る側の職員たちも次々と感染し、少なくなっていく。
「こんなときこそ! だよ」ある職員はそう言いました。
心身ともに疲労困憊し、精神的にもギリギリ…。いや、それ以上の状態にあるなかで、職員たちは必死に明るく努めていました。ご利用者に有効な薬がない以上、自分たちにできることは身体的なお世話をさせていただくこと、精神的に支えること。それには、職員同士も支え合うことが必要でした。
クラスターの最中にあった私の誕生日。自分自身がそんなことを思い出す余裕もないなかで、職員たちが夕方、お祝いをしてくれました。
管理者の私が心身ともに疲れているように見えたのでしょう。申し訳ない気持ちと、こんなときでも人を思いやるみんなの心に涙が出ました。だからといって、誰一人浮かれる者などいません。明るく努めているみんなの笑顔の裏に、たくさんの涙が流れていました。
必死に頑張っていたのは、介護職だけではありません。看護師、リハビリ職、栄養士、事務、清掃、洗濯、厨房の方たち…。みんな必死に頑張ってきました。
そして、感染拡大、ご利用者の状態など、つらいお話をご家族に伝えなければならない生活相談員やケアマネジャーの心労も、並大抵のものではありませんでした。
大切なご利用者の苦しむ姿を見て、平常心でいられる人はいません。
クラスターが収束したからといって、終わりではありません。ここからは、ご利用者、ご家族、職員たちの受けた心の傷をケアしていくことが必要です。
著書のご案内
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山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8