山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「サンタクロースはいないの?」
もうすぐクリスマスですね。
子どもの頃、クリスマスの夜は靴下を枕元に置いて眠りました。いや、結構大きくなってもやっていたかな(笑)
よい子にしていれば、サンタクロースがクリスマスの夜にやってきて、プレゼントをくれると信じていました。いまでも信じていないわけじゃありません。
いくつになっても、心のなかで誰かと取り引きをしている自分がいませんか?
「これを頑張ったら、明日の仕事が上手くいきますように…」「これを頑張ったら、試験に合格しますように…」「これを頑張ったら、恋が成就しますように…」
そんなふうに心のなかで、誰かと取り引きをしているようなときがあります。
この「誰か」は神様なのか、サンタクロースなのか、その正体はわからないけれど、人はいくになっても、心に「願い」をもっている気がします。
私がはじめて介護の仕事に就いた21年前、女性入居者のTさんは、
「長生きなんてするもんじゃない。長生きしたって、ろくなことがない。こんなふうに人の世話になって…、人に迷惑をかけて…」
出会った頃、いつも寂しそうな表情でそう言っていました。
一年後、末期がんがわかり、施設で最期を迎えることになったTさん。
私は、どうしてもTさんに聞きたかったことがありました。
「Tさん…。前によく『長生きなんてするもんじゃない。長生きしたって、ろくなことがない』って言ってたでしょ? 今でもそう思ってる? 俺さ…、いつか偉くなって、この国をもっといい国にするよ。長生きした甲斐があったって思えるようにする。だからさぁ…」
私がそこまで言うとTさんは…、
「いまはもうそんなこと思ってないよ。あんたに会えてよかった」
そう言って、これ以上ないくらいのやさしい表情で微笑みました。
それが私とTさんが最後に交わした言葉。
翌日、Tさんは旅立ちました。
Tさんは、身寄りのない方でした。出会った頃は比較的健康で、ご自身の生活に不自由されている様子はありませんでした。Tさんが「長生きなんてするもんじゃない」と言った理由は何だったのか。Tさんの「願い」は何だったのか。いまでも考えることがあります。
もうすぐクリスマス。
サンタクロースの登場を待っているのは、本当に子どもたちだけでしょうか。
新刊のお知らせ(編集部より)
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このたび、山口晃弘氏の著書が発行されました!
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8