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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「路地裏の少年」

 父が急死しました。
 先週のブログの原稿を書き終えた翌朝のことでした。
 残念ながら父は家族に最期の言葉を残してくれることはありませんでしたが、父の死を通じて、人生においてこれ以上ない悲しみとともに、多くの学びを与えられた気がします。

 50年前、父の息子としてこの世に生を受けた私は、父の期待に反する息子だったと思います。身体も心も線が細く、よく病気もしたし、けがもしたし、おとなしくて学校ではいじめられっ子だし、父親が望む息子像とはかけ離れていたでしょう。それでも父から何か厳しく言われたことはありませんでした。

 17歳のとき、喧嘩に強くなりたくて空手を始めました。毎日毎日稽古をしていたら、空手より本当に喧嘩が強くなってしまい、そこからは長い期間、荒れた生活をしていました。
 空手の大会に出るようになっても、父は一度も会場に来ることはありませんでした。
 「息子が殴られる姿なんて見られない」と母に言っていたそうです。

 結局、父と二人きりで真剣な話をしたことは一度もありませんでした。男同士の気恥しさか、二人だけの時間は避けていたのかもしれません。

 父の息子として50年生きたにもかかわらず、何も親孝行はできませんでした。

 高齢者介護の仕事に携わり21年。
 これまでどれだけの高齢者…どなたかの親をお見送りしてきたか数えたことはありません。
 息子さんの想い、娘さんの想いを想像し、親を失う子の悲しみに寄り添っている気でいました。わかったような気でいました。

 実際に親を失ってみて、その悲しみや苦痛がどれほどのものかようやくわかりました。
 私はいま闇の中にいます。
 しかし、立ち上がらないわけにはいきません。家族がいる。職場がある。私には立ち上がる責任があります。
 闇の中だからこそ光は放つことができるのだとも思います。

 これからはきっと、ご利用者のご家族の気持ちに、もっと寄り添える気がします。
 そして、人生にはいつ終わりが来るかわからず、その一瞬一瞬を大切に生きること。周りの人たちをもっと大切に想うことが、できるような気がします。

新刊のお知らせ(編集部より)

このたび、山口晃弘氏の著書が発行されました!
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8