山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
-
介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「人の価値、物の価値」
先週末は、デイサービス、特養で、それぞれ敬老会が行われました。
先週も書きましたが、敬老の日とは「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日です。
長く生きる、長く存在するということが、それだけの時間、社会に貢献しているという意味にもとれます。
人だけでなく、物も長く存在することで、社会や誰かの役に立っていたり、社会や誰かの大切な物であるのかもしれません。
私が中学生だった頃、友だちのA君は古いアパートに家族四人で住んでいました。
四畳半一間、お風呂はなく、共同便所。彼はほかの友だちを家に呼ぶことはありませんでしたが、私のことはいつも部屋に招いてくれて、一緒に漫画を描いたりして遊びました。
「うち(家)狭いのに、いつも遊びに来てくれてありがとう」
そんな言い方をするA君が、私は大好きでした。
中学生だった当時の私には、ご家庭の事情はわかりませんでしたが、ご両親が共働きでいつも不在のなか、A君はいつも小さな弟の世話もしていました。
同級生のなかに、彼の家のことを馬鹿にして、悪く言う人がいました。その度、A君は笑っていましたが、とても寂しそうだったことを覚えています。
高齢者のお住まいにも、さまざまな事情があります。いつからかよく使われるようになった「ゴミ屋敷」という表現。たしかに、私も仕事柄、高齢者のご自宅に伺い、足の踏み場もないお家も見たことがあります。
でも、きっとその家も最初からそのような状態だったのではないと思います。
一生懸命働いて、貯金をして、ローンを組んで建てた念願のマイホームだったかもしれません。人生にはよい時もあればそうでない時もあります。複雑な事情があって、生活が乱れ、いつしか足の踏み場もない状態になってしまったのかもしれないです。
たとえ介護などでかかわっても、私たちはその人の…、その家の歴史の一部を知るにすぎません。
私たちが簡単に「ゴミ屋敷」と呼ぶその家には、人の想いや歴史があります。
「敬老の日」…。老いた者を敬愛する気持ちと同様に、長く役目をはたし、古くなった家や物。そういったものにも、敬愛の気持ちを持つ人であってほしいと思います。
新刊のお知らせ(編集部より)
-
このたび、山口晃弘氏の著書が発行されました!
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8