山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「見上げてごらん 夜の星を」
小さい頃、大切な人や可愛がっていた動物が天に召されると、「〇〇は星になった」と言われました。いまはそんなふうには表現しないのかなぁ。
いまは情報社会だし、子どもたちももっと現実的かもしれないですね。
星になった…。誰が言い出したのかわからないけれど、素敵だなと思います。
星になって、遠い空から私たちのことを見守ってくれている。
それが哀しみを乗り越えたり、生きていくための勇気をくれるなら、大人になってもずっと信じていていいと思います。
私が勤務する特養千歳敬心苑では、毎年『合同慰霊祭』を行ってきました。
前年度にご逝去されたご利用者を、ご遺族とともに慰霊します。
毎年、秋ごろに行っていましたが、今年はコロナ禍。このような状況で、ご遺族の方をお招きするのも難しく、残念ながら今年は取りやめるしかないと思っていました。
しかし、職員から「例年のように豪華な祭壇を用意して、ご遺族をお招きして行うことはできなくても、職員だけで行うことはできないだろうか」という意見があがりました。
そこで今年は、会議室を一週間、合同慰霊祭会場とし、ご逝去されたご利用者の方たちの遺影を飾り、職員たちが自由な時間に手を合わせに行くことができるようにしました。
出勤時、休憩時間、退勤時など、職員たちは一週間の間、何度も遺影に手を合わせに行っていました。
私も何度も足を運びました。施設は人が生活する場です。この間も、急変され状態が悪化した方、救急搬送された方がいました。生活の場であり、命の現場でもあります。
まして世の中はコロナ禍であり、気の休まることがありません。
それでもこうして私たちは生かされ、日々の職務をなんとか果たすことができています。
私はご利用者の遺影の前で、何度も手を合わせ「ありがとうございます」とお礼を言いました。
今週も、毎日、遅くまで働きました。タイムカードを押して、施設を出ると、あたりはまっ暗。人通り、車通りの少ない寂しい道。空を見上げると、東京の夜空には少しだけ星が光っていました。
みんなあの空の向こうから、見守ってくれているのかな…。
みんなどこかで同じ空を見上げているかな…。
そう思うと、明日も頑張ろう、と思えるのでした。