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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「Let It Be」

 「僕って、介護職に向いてないんですかね」
 ご利用者が何度も同じ訴えを繰り返し、いまトイレに行ってきたのに、5分と経たずにトイレの訴えがある。必死に丁寧に対応しているのですが、一日中繰り返し言われ続けると、平穏な気持ちが保てなってくる。それでも、笑顔で丁寧な対応を続けます。そこにストレスが溜まってきて、自分がこの仕事に向いていないのではないか、と彼は悩んでしまうのです。

 「私って、子育てに向いてないんですかね」
 彼女は、小さな子どもを育てながら、仕事と両立しています。朝は保育園に送ってから仕事に駆けつけ、仕事が終われば急いで保育園に迎えに行く。仕事だけでもクタクタなのに、家に帰ってから子どもの世話と家事をしなければなりません。子どもは小さいときはよく熱を出したり、泣き止んでくれないことも多く、最愛の子どもであっても親は苛立つこともあります。そんな感情をもってしまうことに罪悪感を覚え、自分は子育てに向いてないのではないか、親になるのは早かったのではないか、仕事との両立なんて無理なんじゃないか、と悩んでしまうのです。

 多くの人がこのような悩みを抱えています。
 まして現在はコロナ禍。テレビをつければ、全国のコロナ感染者数は増加傾向にあり、本来娯楽であったはずのテレビ番組ですら、人のストレスを増大させることにつながっているかもしれません。
 11月9日、警察庁が発表した2020年10月の自殺者数(速報値)は2,153人。10月だけで、これまでに、全国でコロナ感染によって亡くなった人の数よりも多くなっているのです(11月28日現在)。
 未来が描けない社会、夢や希望をもちにくい社会になったことは間違いありません。

 そんな社会で、みんな頑張っているじゃないですか。
 自分の感情をコントロールしながら、ご利用者に向き合い、仕事と向き合い、子どもと向き合い、みんな十分すぎるほど頑張っています。
 もっと自分をほめてあげてください。もっともっと自分を認めてあげてください。
 いまは自分を責めるときじゃない。いまは自分を大事に、自分を愛してあげるとき。
 職場でも家庭でも、お互いを認め合って。あなたは尊くて、大切な、かけがえのない存在です。