山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「愛knowマジック」
朝7時。施設に毎日、出勤(?)してくる男性利用者Tさんがいます。
Tさんはスラックスを履いてジャケットをはおり、デイサービスの玄関で、自動ドアが開くのを毎朝、待っています。90歳近いTさんですが、デイサービスに来ることを会社に出勤することだと思っていらっしゃるのかもしれません。
ただ、朝7時にはまだデイサービスは始まらないですし、Tさんが実際にデイサービスを利用するのは週2日。毎日来てくれるのですが、実はご利用日ではなく、Tさんの家にヘルパーさんが来る日だったりすることもあって、職員がご自宅まで送って行きます。
当然、これは介護保険のサービスではなく、職員たちが善意でやっていることです。
Tさんが朝7時に来ても、ドアも開かず、誰も相手にしてくれなければ、もしかしたら毎日、通うことはないのかもしれません。
在宅サービス課のK課長は、以前から毎朝7時には出勤してお仕事をされています。
朝早く来る理由は、勤務時間が始まってしまうと、みんなから信頼の厚いK課長は相談に乗らなければならないことも多く、ご自身の事務的な仕事が片づかないからかもしれません(優しいK課長は何も言わないので、本当の理由は分からないけど)。
でも、最近は朝7時からTさんの話し相手。私が7時50分くらいに出勤すると、毎朝、お二人がソファに座って談笑する姿が日常になっています。
お話を聞いてもらえてうれしそうなTさん。だけど、K課長もいつも楽しそうにお話を笑って聞いています。毎朝1時間、Tさんのお話を聞いていたら、課長の仕事は全然進まないでしょうに…。心底、優しい人なのです。
こんな人が上司だったら…。
上司がお手本を見せてくれているのだから、ご利用者に親切に、優しくしなきゃと思いませんか?
こんな上司から「もっとご利用者に親切に、優しく…」と指導されたら、素直に聞けると思いませんか?
うちの職員たちがご利用者に優しい理由。
それは、K課長がかける愛knowマジックなのだと思います。