山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
-
介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「無観客介護」
コロナウィルスの影響で、世界は大きく変わりました。
先日開幕した日本のプロ野球。テレビに映る試合の光景はこれまでと変わらないように見えましたが、実は観客が入っていない。歓声も応援歌も聞こえますが、これは球場の演出でした。選手のモチベーションも考えてのことでしょう。静まり返った球場で試合をするというのは、厳しいものだと思います。
お笑い芸人さんの番組などを観ていても、距離を置いて漫才をしたり、リモートで会話をしたり…。50年を超える歴史を持つ「笑点」でも、リモート大喜利というものが行なわれていました。話にオチをつけてお客さんが笑ってくれて…。これが芸人さんにとってもモチベーションになっているはずです。これがないというのは、本当に寂しいものです。
スポーツもお笑いも、やはり観てくれる人がいてこそ成り立つもの。人の反応や評価があるから頑張れるのだと、改めて思います。
私たちの仕事はどうでしょう。
「介護は密室で行われる」そんな表現を聞いたことがあります。排せつや入浴の介助。プライバシー、羞恥心に配慮する仕事ですから、確かに密室で行われるものも多い。誰も見ていないから…。まして相手が寝たきりで物言わぬ人だったり、認知症で忘れてしまったり…。そういう環境だから、「不適切なケア」が起こりやすいのかもしれません。
人の目がない。丁寧にやっても、適当にやっても、誰も評価も批判もしない。
いわば介護は、常に無観客状態です。
考えてみれば、モチベーションを維持するのが難しい職業だったのだと改めて思うのです。
だからこそ、上司からの評価や助言が必要なのではないでしょうか。
褒めるときはしっかり褒める。間違っているときは、しっかり指導する。
見てくれている安心感と、見られている緊張感が必要なのです。
誰も見ていなくても、しっかり仕事をこなすのがプロ。確かにそのとおりです。
しかし、無観客で行われるスポーツや芸人さんの姿を見ていると、人はやはり人の反応が欲しい。応援が欲しいのだということが改めてわかります。
介護職に無観客試合をさせないで。
しっかり褒めてあげてください。応援してあげてくださいね。