山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「入居者の生活は変わったか?」
新型コロナウイルスの話題ばかりで、みんな疲れています。
自粛しなければいけない状況で、自宅で過ごせば何気なくテレビをつける…。
テレビで報じられるのはコロナのことばかり。感染者が〇〇人、亡くなった方が〇〇人…。
終息するどころか、出口の見えない中でみんながさまよっているような世の中になりました。
家族と過ごせない。友だちに、恋人に会えない。飲みに行けない。遊びに行けない。
私たち日本人は、少なくともこの50年、こんな自由のない暮らしをしたことがありませんでした。いかに恵まれた環境で生きてきたのかを実感します。
しかし、老人ホームなどで暮らす入居者の生活はどうでしょうか。
コロナの心配はともかくとして、生活そのものは大きく変わりましたか?
コロナが流行する前、入居者は、自由に好きな人に会ったり、飲みに行ったり、遊びに行ったりしていましたか。自由に暮らしていましたか。
多くの入居者が、ほとんどの時間を施設内で過ごし、多くの時間をテレビを見て過ごし、多くの時間を座っているだけ、寝ているだけ、食べているだけの生活をしていたのではないでしょうか。
コロナなんて流行する前から、ずっと「自粛」のような生活を強いられていた…。
私たちのように、家族と過ごし、友だちに会い、飲みに行ったり、遊びに行ったり、そんな自由な尊厳ある暮らしをしていなかったのではないでしょうか。
もう一度、介護の原点にかえってみたい。私たちの介護は、本当に「個人の尊厳を保持」してきたか…。
私たちの暮らしが一変したにもかかわらず、入居者の暮らしがほとんど変わっていないとしたら、私たちは自分たちの介護を見直さなければならないと思います。
入居者はとっくに「自粛」していたのかもしれません。