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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「子どもに出来て、大人に出来ないこと」

 スポーツをする小学生の子どものなかには、どうしても結果が出せずに悩んでいる子もいます。
 そんな小学生にプロの選手やメダリストなどが指導をして、目標に向かってチャレンジしていくテレビ番組があります。

 前回は、小学生女子のバレーボールのチームに密着。小学6年生が一人だけで、他は5年生、4年生で構成されているチームです。小学校時代は、一年での体格差も大きく、6年生一人のチームでは他チームと対等に戦うのが難しいことは明白です。事実、このチームは6年生一人の体制になってから、一勝もしていません。
 このチームが番組に応募してきた理由は、6年生一人のエースが小学校を卒業する前に、一勝だけでもさせてあげたい、という思いからでした。5年生、4年生の子どもたちは、才能豊かな6年生に、自分たちが追いついていけないことを申し訳なく思っていて、「卒業までに彼女に一勝を!」と誓っていたのです。

 番組が用意した臨時コーチは元オリンピック選手。苦しい練習に耐えなければ勝利はないのは当然ですが、臨時コーチの指導は、「苦しいことを楽しくやる、みんなでやる」というもの。
 苦しい時でも笑顔を絶やさない大事さを伝え、一つの課題をクリアするたびに大袈裟なくらい褒めて自信を付けさせます。
 コーチの指導の甲斐もあってチームは急成長していきます。「6年生のエースに一勝を!」その想いのもとに団結し、みんな苦しい練習にも耐えて力をつけていくのです。

 そして迎えた6年生にとって小学校最後の大会。実績十分の名門チームと初戦から対戦し、互角の戦いをしますが、相手チームに一日の長がありました。
 結果的には、6年生のエースに一勝のプレゼントはできませんでしたが、みんなの涙と笑顔が入り混じった表情は、お互いに感謝の気持ちが溢れていました。
 いいものを見せてもらいました。

 夢に向かって純粋に努力する子どもたちを見ていて、毎回、涙が出てきます。
 当たり前ですが、私たち大人にも子どもの時代がありました。純粋な気持ちで、仲間と共に、仲間のために、努力して、何かを手に入れたくて、変えてみたくて、涙を流した時代がありました。
 その子どもが大人になっただけなのに、なぜ大人はその時代の純粋な気持ちを持ち続けることが出来ないのでしょう。大人が子どものように、純粋な気持ちで、仲間とともに、仲間のために、励まし合ったり、夢を追いかけたりすることは、恥ずかしいことでしょうか。大人っぽくないことでしょうか。
 それが大人だと言うのなら、私は無理して大人ぶりたくはない。少年の心を持ったままの大人でいたい。

 介護もチームで実践するもの。ご利用者のために、チームが、仲間が純粋な気持ちで努力をし、力を合わせることは、そんなに難しいことでしょうか。
 私たちは、そんな時代を経て、大人になったはず。出来ないはずがないのです。