山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「シロでもクロでもない世界で僕らは闘う」
厚生労働省の発表によると、介護施設等の職員による高齢者への虐待件数が2018年度で621件(前年度510件)あり、過去最多だったとのことです。
被害者は認知症の人(認知症高齢者日常生活自立度II以上の人)が80.5%で、虐待で死亡した人もいました。虐待件数は12年連続で増えているそうです。
ネット上では、相変わらず介護職員に対する同情の声や処遇改善が急務である、というようなコメントが踊っています。私はそのような意見の人に聞きたい。
「自分の親がそうされても同じことが言えるのか?」と。
認知症の人は、確かに事実と異なることを言ったり、同じ話や行動を繰り返したりしています。
でも、だから何だというか…。そんなこと承知でこの仕事に就いたのではないか? 認知症の人の繰り返す言動にも、穏やかに寄り添っている優しい介護職も大勢いる。
辞めたい人は辞めたらいい。世の中、ほとんどの産業が人手不足だ。行き先は他にもある。
介護の仕事をしていれば偉いのか? 下の世話や人の嫌がる仕事をしているから偉いのか? 高齢者は介護保険料を納めているうえに、利用料金まで支払っている。間違いなく顧客です。そして、私たちより目上の人です。私たちが強者になる要素は一つもない。
厚生労働省の発表が証明しているように、高齢者への虐待が後を絶たない。家族や親族などによる虐待件数も過去最多の1万7249件(前年度1万78件)だったといいます。
こんな世の中を、やれ政治が悪い、教育が悪いと嘆いていても何も変わりません。
介護のエビデンスもICT化も、社会福祉法人のガバナンス強化も大事だろうけれど、そんなことに夢中になる前に、人間としてもっと大事なことがあるんじゃないか…。
私は、人と人とが向き合う仕事で、大切なのは心の教育だと思います。
介護を受ける高齢者は、優しい言葉を待っています。思いやりのある人を待っています。
介護を要するようになった高齢者を拘束したり、トイレに行きたいときに平気で待たせたり、声もかけずに身体に触れたり、車いすを動かしたり…。そんな人がいる世界をシロだとは思えない。しかし、大半は心ある介護職…と考えるとクロでもない。
シロでもクロでもないこの世界で、私たちは人として正しいことをします。
大切な人を守るために、闘います。
☆イベントのお知らせ☆
令和2年2月16日(日)千歳敬心苑でイベントを行ないます。
テーマは「認知症1000万人時代に何が起きるのか」です。
これからの家族・地域・社会のあり方を「わが事」として一緒に考えます。
是非ご参加ください。
お申し込み・お問い合わせはこちらまで。http://www.keisinen.or.jp/chitose/cafe/index.html