山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「私の心の中にある老人ホーム」
私の勤務する特養千歳敬心苑では、今年も合同慰霊祭を行いました。
この慰霊祭は、前年度一年間でご逝去された利用者様を偲び、ご遺族をお招きして供養するものです。
今年もご遺族、ボランティアの方たちと共に故人を偲び、慰霊祭終了後のお茶会では、利用者様との想い出を語り合いました。最も長く敬心苑で過ごしてくださった女性利用者様は、入居から21年。104歳で旅立たれました。
私がこの業界に入ったばかりの頃、厳しい女性の利用者様がいました。
彼女は元教師で、私たち介護職にとても厳しく、気に入らないことがあるとお茶の入ったコップを投げつけたり、職員の髪の毛を掴んだりすることもありました。
ところが、体調を崩して入院したのをきっかけに、退院後はすっかりおとなしくなってしまいました。
私が「どうしたの?最近、らしくないね」と聞くと、彼女は…、「私ね、死んだあと誰からも思い出してもらえなかったら寂しいと思ったの。山ちゃん…、たまにでいいから、私のこと思い出してね」と言いました。
私が「ばかだなぁ。思い出すことなんかねえよ。忘れないんだから」と答えると、彼女は「山ちゃん…。」と言って大粒の涙をポロポロこぼしていました。
人はいつか死にます。
ただ、本当の死とは、忘れられてしまうことではないかと思うのです。
私はこの仕事を始めて20年になります。これまでに何百人という方をお見送りしてきました。その方たちはみんな私の心の中で生き続けていますから、私の心の中にはかなり大規模な老人ホームがあります。
人は人の心の中で想い出と共に生き続けます。
皆さんのこと、絶対に忘れません。