山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
さらば、革命戦士
2019年6月26日。
プロレスラーの長州力選手が、45年間の現役生活にピリオドを打ちました。
福祉、介護とはまったく関係のない話に思うかもしれませんが、私の福祉、介護人生は、彼の存在なくして絶対にありませんでした。
1982年10月8日後楽園ホール。長州選手はアントニオ猪木選手、藤波辰爾選手と組んで外国人と対戦しましたが、格下扱いをされた長州選手は我慢できず、試合そっちのけで藤波選手に牙をむきました。今ではよくある光景ですが、当時のプロレス界は日本人対外国人が主であり、しかも絶対的エースで社長のアントニオ猪木が後継者と決めた藤波選手に牙をむくなど、絶対に許されない時代でした。この時に長州選手がマイクを持って放った言葉が、
「俺はお前の噛ませ犬じゃない!」
当時の日本は年功序列社会。上司に逆らうなど絶対に許されない時代に、この長州選手の行動は、世間で苦しむサラリーマンの心を鷲掴みにし、長州選手は一気に時代の中心に躍り出ました。
それでも、どうしても猪木越えができず、苦しみました。国民的英雄だったアントニオ猪木。実力ではうなぎのぼりの長州選手が既に上だった。しかし、それを認めてもらえないジレンマから、長州選手はリング上でマイクを握り、同世代の藤波選手、前田選手に呼びかけ、
「お前ら噛みつかないのか?今しかないぞ、俺たちがやるのは!」
と叫びました。猪木選手は年齢的に既にピークを過ぎていました。黙っていても、いつか自分たちの時代が来る。それでも長州選手は与えられた座ではなく、力づくでその座を奪いに行ったのです。
介護業界に入職してから、私はこの業界を変えるのは闘いだと、すぐに感じました。
志や想いもなく、高齢者を粗末に扱う者との闘い。福祉の理念や理想もなく、私利私欲にまみれた者との闘い。そして、福祉の必要性を理解しない社会との闘いです。
長州選手の言葉、行動に励まされながら頑張ってきました。
体制に噛みつき、周りからボロカスに叩かれた時も、「無事故無違反で名を遺した奴はいない」 という長州選手の言葉に勇気をもらいました。
介護、福祉・・・人を守るというのは闘いです。
闘いには勇気がいる。働きながら、理不尽なことに不平不満を持ちながら、愚痴をこぼしているだけで時だけが過ぎていませんか。
大切な人を守るために、避けて通れないこともあるはずです。
「今しかないぞ、俺たちがやるのは!」