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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

俺たちは天使だ!

 5月12日は、「看護の日」でした。
 1990年、当時の厚生省が「21世紀の高齢者社会を支えていくためには、看護の心、ケアの心、助け合いの心を、私たち一人一人が分かち合うことが必要・・・」と制定したのです。この5月12日は、「クリミアの天使」と呼ばれ、近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日です。

 私はこれまで、「クリミアの天使」ならぬ「介護の天使」たちをたくさん見てきました。
 高齢者の生活、人生を支えていくには、医療と介護の連携が必要です。
 私たちがどれだけ大切にしても、やはりご高齢の方は体調を崩しやすく、病気にもかかりやすい。
 肺炎、インフルエンザ、骨折……これを私たち介護職が治療することはできないのです。医療が救ってくれた命をたくさん見てきました。
 だけど、人が生きるということは、心臓が動いているだけ、呼吸をしているだけ、身体に水分や栄養が入っていくだけではないことも、たくさん見てきました。
 人間が生きていくうえで大切なもの。それは「生きていく理由」です。
 人間は、誰か愛する人のために生きているような気がします。親は愛する子供のため。夫婦は愛する夫、妻のため。恋人同士も、友達も、みんな愛する人のために……

 介護を受けるようになっても、人はきっと誰かのためになりたい。誰かの役に立ちたい。それは言い換えれば、誰かに必要とされたいのかもしれません。

 入院先で治療を終わっているのに、食事を食べてくれなくて退院できない利用者を、介護職はお見舞いにいきます。
 病院の看護師がいくら勧めても食べてくれなかった食事を、介護職がお見舞いにいったことによって食べてくれる場面をたくさん見てきました。
 彼らにすごい技術があるのではないのです。

「みんな待ってるから」
「私のために食べて」

 そんな言葉が、ご利用者の心を動かし、ひとさじの食事を食べてくれるのでした。
 医療で救ってくれた命、次は介護で心を救う番です。

 「白衣の天使」と「介護の天使」のお互いの連携が、高齢者が幸せな人生を生きる鍵になるのかもしれません。