山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
幸せなら態度でしめそうよ♪
先日、共に働く施設の介護職員S君が、結婚式をあげました。
彼は30歳。今の施設に転職して、まだ2年足らずですから、役職はついていません。
しかし、採用面接の場で「僕は将来、施設長になりたいです」と宣言したツワモノです。
日頃から積極的に様々な提案をしてきます。食事をする間も惜しむかのように、お昼もご飯を食べながら本を読んで勉強しています。
彼の上昇志向の理由、それが結婚式で初めてわかりました。
素敵な奥さまが待っていたからだったのですね。
古い考えと言われるかもしれませんが、男子たるものやはり女性は守る。家族は男が守る。私はそう思っています。
奥さま、家族を守るためには、出世した方がよいですし、できるだけ収入があった方がよいに決まっています。
30歳のS君。まだまだこれから脂ののってくる時期です。これからの大活躍を職場の上司として時に見守り、時に応援していきたいと思います。
披露宴のスピーチで、新郎新婦に尋ねました。
「今、幸せですか?」
もちろん愚問です。披露宴の場で聞くまでもありません。
二人は介護の仕事をしています。だから、忘れないでほしいことがありました。
この幸せの絶頂、人生の中で輝いている今の瞬間が、二人が介護しているお年寄りにもあったことを。
今の時代の高齢者は、結婚した当時、二人のように恵まれた時代ではありませんでした。こんなに豪華な披露宴ではなかったことでしょう。
でも、きっと二人に負けないくらい幸せだった瞬間があったと思います。二人がお互いを想うように、相手のことを愛していた。相手を幸せにしたいと思った。幸せを願っていたはずです。
それから数十年という時間が経ち、時は残酷なもので二人の身体を弱らせていきます。やがて、人の介入が必要になり、介護を受けるようになります。人によっては認知症になり、その症状が進み、愛している相手のことすらわからなくなることもあるのです。
「ずっと二人でいたい」そう願っていた二人は、さまざまな事情により、介護施設に入居することになりました。
私たちが介護している目の前の高齢者は、そういう経験を経て、入居してきた方達だということ。誰かの大切な人。誰かの愛した人。誰かの幸せになってほしいと願った人だということを忘れないでください。
そんな想いで介護をしてね。「誰か」に代わって、幸せにしてあげてね。
幸せな二人。
この子達の幸せがずっと続きますように・・・と心から願っています。