山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
心の処方箋
「次の方どうぞ」
「おお!〇〇さん、どうしたの?」
「先生、あたしなんだか調子が悪いのよ。風邪引いたのかしら」
「〇〇さん、毎日一生懸命働いてるから、疲れてるんじゃないの?あんまり無理し過ぎちゃダメだよ」
「先生、ありがとう。先生の顔見たら少し元気になったよ」
「あはは!そりゃ良かった。薬なんてできれば飲まない方がいいからね」
「ホントね。先生、ありがとう!」
昭和の病院では、こんなやり取りをよく見ていた気がします。
厚生労働省の発表によると、平成27年度の日本の国民医療費は、42兆3,644億円。そのうち65歳以上は25兆1,276億円で59.3%を占めています。すごい数字になったものです。
医学が進み、多くの人が長生きできる国になりました。喜ばしいことだと思います。しかし、長生きと健康はイコールではありません。
また、心がダメージを受けている方も多くなりました。長生きと幸せもイコールではないようです。
病気や怪我などで、治療期間が長くなると、患者は不安になります。
「もしかしたら、このまま治らないのではないか……。一生このままなのではないか……」
交通事故の被害者である女性は、長年事故の後遺症に苦しめられていました。首の損傷、いわゆるムチウチというのは、本人以外にはわかりにくいと言われます。
本人は藁をもつかむ気持ちで通院しましたが、心無い医師から「被害者ぶるな。自分だっていつ加害者になるか分からないのだから」と信じられない言葉を浴びせられました。
彼女は、加害者が一刻も早く安心できるようにと、治療に励んでいたのです。治療するはずの医師が、患者の心を傷つけてどうするのでしょうか。
セカンドオピニオンをしてから、すでに5年の月日が流れました。彼女を5年の間、治療してくれている今の医師は彼女を絶対に見捨てません。
先日、彼女は医師に対し、「先生、私って人より治るのが遅いんじゃないでしょうか?ご迷惑をおかけしてすみません」と言いました。
それに対して医師は、「そんなことないよ。徐々によくなってるからね。徐々に、だよ。気にすることないからね」と優しく答えました。
最初に通った病院で、心を傷つけられた彼女に必要なのは、この「心の処方箋」なのです。今の医師のおかげで、彼女は身体も心も徐々に回復しています。
医療にも福祉にも共通していえること。人は身体だけ救われても、心が救われなければ幸せにはなれない。私はそう思います。
- お知らせ
- 2017年11月25日(土)東京でセミナーを開催します。
- 『介護とは何か? ~本当に大切なこと~』
- 【開催日】2017年11月25日(土)
【時間】10:00~16:00
【会場】NATULUCK茅場町新館3階大会議室
【受講料】7,000円
【主催】関西看護医療ゼミ
- ※申し込み・お問い合わせは下記サイトで
http://www.kangoiryo.com/seminar/201711/25-a-yamaguti.html
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