山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
「それ、もしかして介護?」
私が17歳の時、極真空手に入門しました。そのきっかけは、『空手バカ一代』という劇画でした。この作品の中に登場する「喧嘩十段、芦原英幸」という人物に憧れ、極真空手の門を叩きました。
劇中で、この芦原さんが道場破りを繰り返すシーンがあり、その時「それ、もしかして空手?」という相手を小ばかにしたセリフで挑発するのです。
介護の世界に入ってからも、「それ、もしかして介護?」と言いたくなるような場面をたくさん見てきました。
ものも言わずに、いきなり後ろから車イスを動かす人。いきなり掛け布団を引っ剥がす人。ごぼうの泥を落とすかのようにお風呂でシャワーをかける人。人手が足りない、忙しいとイライラする人。お年寄りの声に耳を傾けず、職員同士でゲラゲラ笑っている人。利用者さんが立ち上がるだけで「危ないから座ってて!」と言う人。
「それ、もしかして介護?」
介護を何だと思っているのか?介護職って何様なのか?――そもそも私たちが職業として行っているのは、「介護」ではなく、「介護サービス」です。
サービスとは、顧客に価値を提供することであり、その顧客とは利用者です。
どこの世界に、お客様をものも言わずに動かしたり、イライラして接したり、上からものを言うサービスがあるのでしょうか。
まして私たちの顧客である利用者は、人生の大先輩です。敬意を持って接するのが当たり前であり、介護を要することになろうが、認知症になろうが、粗末な扱いを受けるなどあってはなりません。
私が介護の業界に入ったのは、29歳の時でした。
まだ血の気の多かった私は、職場の先輩に向かって「それ、もしかして介護?」と本当に言っていました。
今はさすがに言いません。だけど、目に余ることがあれば、自分の職場であろうが、そうでなかろうが、言わせていただきます。
「それ、もしかして介護?」
プロの介護職がそんなことを言われないように……誰の目にも耐えうる「素晴らしい!」と言われる魅せる介護を目指してほしいものです。